この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第24回目は、スポーツカーの指標である時速100マイルに日本車として初めて達した、いすゞ・ベレット1600GTの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

当時としては数少ない正確なステアリング特性

画像: スポーツカームードが濃厚に漂うコクピット。ウッドの3本スポークステアリングにシフトストロークの短い4速フロアMT。シフトフィールは小気味良い。

スポーツカームードが濃厚に漂うコクピット。ウッドの3本スポークステアリングにシフトストロークの短い4速フロアMT。シフトフィールは小気味良い。

これだけでもベレット1600GTが、世界的にも後発メーカーであるいすゞの意気込みを如実に示した作品だったことがよくわかる。後発の企業は洋の東西を問わず、いつも立ちふさがる大企業の壁に挑戦するため、技術的にもスタイルの面でも、常に一歩を先んじた新機軸を示さなくては立ち行かない宿命を持っている。
 
1600GTには先述の昭和39年9月のマイナーチェンジと同時に、1500GTがラインアップに加えられた。1500GTのエンジンはG150型、直4OHV、1471cc(79×75mm)で、SUキャブの2連装により、出力は77ps/5400rpm、最大トルク12kgm/4200rpmを発生した。

最高速は150km/hである。ベレット1600GT/1500GTは、「ベレG」の愛称で知られ、リアのスイング・アクスル特有のクセのある操縦性を持っていた。それでもラック&ピニオンのステアリングシステムと相まって、当時としては数少ない正確なステアリング特性を示し、その鋭いハンドリングはスポーティ走行の醍醐味を味わわせてくれた。

ただし販売台数はそれほど伸びなかった。それというのも93万円(1600GT)という、車格がより高いセドリック1900あたりとほぼ同じの高価格が影響していたのかもしれない。

画像: 写 真 は ベレット1500GT。1600 GTの93万円に対して、88万円と若干安価だったが、どうしても中途半端。存在価値を認められず1年余り併売された後に生産中止となる。

写 真 は ベレット1500GT。1600 GTの93万円に対して、88万円と若干安価だったが、どうしても中途半端。存在価値を認められず1年余り併売された後に生産中止となる。

たしかに、昭和40年に鳴り物入りでデビューしたスカイライン2000GT(S54)よりも数万円高いのは、大きなハンディキャップではあった。それだけにユーザーはマニアックで個性を重んじる人たちが多かった。つまりトヨタ、ニッサンの多数派ではなく一匹狼とでも言おうか。

ベレット1600GTは細部変更・改良を繰り返し少数ながらも健闘したが、ハイパワー化の波には抗しきれず、ベレットGTRへと進化していく。ともかく、日本の自動車史の中にあって「GT」の名称がこのクルマからスタートしたことは、間違いない。独特のエキゾーストサウンドとともに、人々の記憶に残る1台である。

いすゞ・ベレット1600GT(1964・RP90型)諸元

●全長×全幅×全高:4005×1495×1350mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:940kg
●エンジン型式・種類:G160型・直4OHV
●排気量:1579cc
●最高出力:88ps/5400rpm
●最大トルク:12.5kgm/4200rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:5.60-14
●新車価格:93万円

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