水素が拓くクルマの未来・・・大観すれば、新型CR-VがFCEVとして日本市場に復活したことには、大いなる意義があります。その上であえて「このクルマを選ぶ!」理由にはやはり、かつてないカッコよさとか道具としての無敵の実用性とか、より身近な次元での動機付けが欲しいもの。大丈夫。新型CR-Vはおそらく、歴代最高の「カッコよく使えるSUV」に進化していること、間違いなし。

さまざまな「可能性」を感じさせる力強いルックス

かつてホンダが「クラリティ」に「プラグイン・ハイブリッド」と「フューエル・セル」と「フルバッテリー」の電動モデル3種類をラインナップした時、なかなか面白い趣向だな・・・と感じた記憶があります。

画像: FCスタックはGMとの共同開発。プラットフォームはCR-V PHEVのものを使っている。(写真は北米仕様車)

FCスタックはGMとの共同開発。プラットフォームはCR-V PHEVのものを使っている。(写真は北米仕様車)

市場の特性に合わせた仕様分けだということはよくわかっていましたが、一方でブランディングという意味ではちょっとわかりづらい印象も受けました。

今回の新型CR-V e:FCEVは逆に、水素を燃料するフューエル・セル・スタックで自家発電して電気モーターを動かすFCEVでありながら、外部からの充電機能(普通充電のみ)と17.7kWhという大容量の駆動用リチウムイオンバッテリーまで備えています。

いわば、クラリティシリーズのいいとこ取り!といったところでしょうか。しかも、ベースとなるのが日本でもかつては大人気を博したSUVの最新型。CR-Vはホンダの独自性を象徴する「気合」が入りまくった1台なのです。

画像: 冷却性能の高効率化も含めた「機能美」を感じさせるフロントマスク。薄型ヘッドライトが、ワイド感をアピールしている。

冷却性能の高効率化も含めた「機能美」を感じさせるフロントマスク。薄型ヘッドライトが、ワイド感をアピールしている。

そんなFCEV版の新型CR-Vは、想像していたよりも格上の存在感を放っているように思えました。

FCスタックを始めとする各種ユニットを搭載するにあたり、フロントまわりを中心に専用デザインが与えられています。具体的にはフロントオーバーハング部を110mm延長したのに合わせて、フード/フロントフェンダー/フロントバンパー/グリルが変更されています。

ボディのサイズアップと調和するメッキパーツの採用、フロントグリル内フィンのアレンジとあいまって、伸びやかさが増しているところが、グレードアップのポイント。リアバンパーロア部やガーニッシュ類、リアコンビネーションランプの変更など、「クリーン」「タフ」「アイコニック」というテーマ性は、十二分に伝わってくる仕上がりです。

日常でも非日常でも類まれな「頼りがい」を実感

CR-V e:FCEVは、SUVとしての利便性を高めるために、自宅や外出先で普通充電できるプラグイン機能を備えています。一充電あたりのEV走行可能距離は60km。水素の一充填(3分)では600km以上走ることができますが、日常的な使い方の中ではほぼ、駆動用バッテリーの電力だけで賄うことができるでしょう。

画像: 専用ACコネクターを普通充電口に挿すと、ご覧のとおりさまざまな家電製品を使える。窓を閉めていても利用できるので、アウトドアレジャーにぴったり。

専用ACコネクターを普通充電口に挿すと、ご覧のとおりさまざまな家電製品を使える。窓を閉めていても利用できるので、アウトドアレジャーにぴったり。

そうしたストレスフリーな走行性能に加え、多彩な外部給電機能を備えるところも、CR-V e:FCEVの特徴です。普通充電ポートにAC車外給電用の「ホンダ パワーサプライコネクター」を接続すれば、最大1500WのAC給電を可能にしています。

さらに荷室内にはCHAdeMO方式のDC給電コネクターが配置されており、可搬型外部給電機「ホンダ パワーエクスポーター」をつなげば、高出力な電力供給が可能となります。レジャーユースから非常時まで、さまざまなシーンでSUVらしい「頼りがい」を実感させてくれそうです。

画像: 日本仕様独自のCHAdeMO方式コネクターによる外部給電を実現。こうした使い方の広がりこそが、グランドコンセプトである「E-Life Generator」を象徴している。

日本仕様独自のCHAdeMO方式コネクターによる外部給電を実現。こうした使い方の広がりこそが、グランドコンセプトである「E-Life Generator」を象徴している。

プラットフォームなどはベースとなるCR-V(PHEV)から変更されていないことから、荷室には、水素タンクを搭載するための張り出しが生まれています。ともすれば邪魔でしかないように思えますが、ホンダはこれを逆手にとり、フレキシブルボードを使ってより使い勝手の良いユーティリティスペースを生み出しました。

同様に、エンジンマウントなどもそのまま活用するために、燃料電池システムを中心とするパワーユニットは巧みに一体化され、小型軽量なシステムを完成させました。コスト面でも有利な創意工夫ではありますが同時に、さまざまな面でのクオリティを高めることにもつながりました。

画像: TFTタイプの専用メーターは、直感的なわかりやすさに配慮してデザイン、機能性が磨きこまれている。エネルギーマネジメント(エネマネ)モードで、バッテリー電力を運転状況に合わせて選択できる。BOSE製12スピーカーで、エンタメ性能もばっちりだ。

TFTタイプの専用メーターは、直感的なわかりやすさに配慮してデザイン、機能性が磨きこまれている。エネルギーマネジメント(エネマネ)モードで、バッテリー電力を運転状況に合わせて選択できる。BOSE製12スピーカーで、エンタメ性能もばっちりだ。

たとえば居住空間のゆとりは損なわれず、しかも振動や騒音を軽減して上質な走りを演出、さらに衝突安全性能まで高められているといいます。燃料電池車としての機能性を最大限に有効活用することで、新型CR-V e:FCEVはSUVとしてのマルチパーパス性能が一気に向上しているようです。

正式発表・発売は2024年夏。「身近に使える燃料電池車」が見せてくれる新しい電動モビリティのある暮らしは、想像以上にきっと便利で楽しく、しかも安心できるものになる・・・そんな予感がします。

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