驚くことに、現在日産が販売しているSUVのラインナップは全て「電動車」です。すなわちタイヤへ伝わるパワーのすべてが、電気モーターから供給されているということです。今回は日産が販売するSUV「キックス」「エクストレイル」「アリア」のすべてを試乗、さらにそのすべてが四輪駆動モデルという絶好の比較試乗が実現しました。3台を乗り比べて感じた「安心感」の高い日産の四輪駆動システムの実力をお伝えします。

まずはキックス e-POWER 4WDから試乗スタート

こうした違いを踏まえて、まずはキックスのe-POWER 4WDから試乗を始めます。キックスは2020年6月に登場した日産SUVラインナップでもっともコンパクトなモデルです。登場から4年が経ちますが、すでに一度大幅な改良が加えられています。

具体的には、2022年7月にパワートレーンが第二世代のe-POWER(現行ノートが採用する最新のe-POWERエンジン)へ変更され、動的質感の底上げが図られました。そしてこの改良の際に、待望の4WDが設定されたという経緯があります。

画像: キックスは2020年6月に日本で発売を開始したe-POWER専用モデル。2022年に改良を受けてパワートレーンの刷新や、4WD仕様が登場した。

キックスは2020年6月に日本で発売を開始したe-POWER専用モデル。2022年に改良を受けてパワートレーンの刷新や、4WD仕様が登場した。

今回の試乗コンディションは、前の晩に降っていた雪が溶けてウエット状態、ところどころみぞれが残っているというもの。走り始めてすぐに、まずは第二世代となったe-POWERエンジンの静粛性の高さを感じました。

そして加速を続けていくと気がつくのが、姿勢変化の少なさです。電動車はトルクレスポンスに優れる特性があるため、モデルによっては意図しない急加速や強い回生ブレーキなどで頭がガクッと揺すられることがあります。

が、キックスでは加減速時の車両姿勢が極めて「自然」で、乗員の身体が安定している感覚を覚えました。さらに山坂道を進んでいくと、軽いステアリングフィールにもかかわらず車両の動きはいつまでもフラットで、いわゆるオンザレール感が味わえました。なにより、ウエット状態の路面において「安心感」がとても高いことに驚きました。

ただしこのキックス、日本では2020年に登場していますが、実はワールドワイドで見れば現行モデルの登場は2016年のブラジルでのワールドプレミアまで遡ります。すなわち、その装いに正直「古さ」を覚えてしまうことは否めません。

2022年の日本仕様の改良では、おもにインテリアデザインが見直され、センターコンソールは現行ノートに近い雰囲気になりましたが、それでも最新モデルと比べてしまうと・・・という印象は残ってしまいます。

が、その乗り味は極めて洗練されていました。現行ノートと同様の最新パワートレーンがおごられていること、そしてe-POWER 4WDがもたらすフラットな走行姿勢が「電動車」と「安心感」を強く意識することができます。

国産コンパクトSUV市場の中でも、電動感の強さ、すなわちガソリン車から乗り換えた時に感じられる新鮮さは随一ではないでしょうか。ちなみに車両価格は2WDが299万8600円から、4WDが326万1500円からと、ハイブリッド専用車としてはかなり競争的といえます。

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