最後に驚きのアリア e-4ORCEに試乗。これは忘れられない乗り味!
さて最後に試乗したのは、3台で唯一の完全電気自動車(BEV)のアリア e-4ORCEです。試乗車は、2021年6月に受注を開始した初期モデルの最上級グレード「B9 e-4ORCEリミテッド」です。
長らくオーダーの止まっていたアリアですが、2024年3月8日にアリアの受注が再開されました。リミテッドはすでに販売を終えており、現在のラインナップ構成でいえば「B9 e-4ORCE プレミア」相当のモデルとなります。
試乗を開始して、最初の交差点で信号が赤だったのでアクセルペダルを離して回生ブレーキによる減速が開始した瞬間! まったく車体が前に傾きません。むしろ誰かにボディを後ろに引っ張られているような印象で減速していきます。この感覚には非常に驚きました。
さらにアクセルペダルを踏んでも車体が後ろに傾くこともなく、まさにフラットそのもの。e-4ORCEによる姿勢制御をエクストレイルよりも強烈に感じました。
さらにワインディング路でハンドルを操舵していくと2.2トン超えの重さを感じさせない動きで曲がっていきます。ただしエクストレイルで感じた「軽快さ」は感じられず、こちらはトロッとしたイメージで、フラッグシップに相応しい「味付け」がされている印象でした。
この驚きの乗り味について、日産のEV技術開発本部のエキスパートリーダーを務める平工良三氏にその感動を伝えると「ありがとうございます。フラットを保つ姿勢制御こそ我々が目指してきた乗り味です。ですがドライブモードを『スノー』で走っていただくと、よりその世界観にあった走り味になります。個人的には、このモードを「コンフォート」という名前にしたかったぐらいです」と語ってくれました。
なんと。ドライブモードに用意された「スノー」は当然エクストレイルのそれと同じ要領で、駆動力配分に加えて加速力も雪道に適したコントロールをしてくれるというものです。
が、雪道に適するように、というのはすなわち急な加減速をしないでようにクルマを制御してくれるという意味で、これが正常路でもその恩恵を享受できるというのです。
続けて平工氏は「e-4ORCEは従来の4WDモデルとは考え方が異なります。つまり、私たちはこのe-4ORCEをシティユーザーに対しても是非乗っていただきたいと思っています」と語りました。
4つのタイヤを制御することでどんな「路面」でも頼もしく走ってくれるという4WDの特性は、e-4ORCEの技術によってどんな「場面」でも安心して走れるように進化したのだと感じました。
アリア e-4ORCEの車両価格は719万5100円からと、キックスの倍以上のプライスタグをつけています。ですが、その価格に相応しい驚きの乗り味をアリアは備えていたと思います。
当然、価格が高くなるほどに市場の要求も高くなりますし、高すぎる! と思われてショッピングカートから外れてしまうことも十分にあり得ますが、これを手にした人(できる人)は羨ましい限りと思うほど素晴らしい仕上がりだったと感じました。
日産のSUVラインナップは魅力的すぎる?と感じた3台の比較試乗
さて、今回は日産が現在発売しているSUVのフルラインナップ試乗をお届けしました。電動技術をいち早く採り入れ、誰よりも率先して電動化時代を進んできた日産は、やはり電気を使った技術に関して抜きん出ていると思います。
3台を順番に乗り比べると当然アリアの完成度に驚くわけですが、キックスの電動感ある走りは痛快でしたし、エクストレイルのe-4ORCEの恩恵を感じられる軽快さは、まるでBEVのような走り味でした。
三者三様でいずれも「安心感」と「電動感」を強く意識させられるものでした。すなわち、どれを選んだとしても、その走りにおける満足度は非常に高いものであることは間違いなさそうです。(写真:佐藤正巳)