2024年4月16日、日産自動車は横浜工場内に建設中の全固体電池の生産を行うパイロットプラントを、報道陣に公開しました。さまざまな意味でEVの性能と生産ポテンシャルを大きく変える「ゲームチェンジャー」が、いよいよ本格的な普及に向けた第一歩を踏み出すことになります。技術的な革新と同時に日産は、今後のクルマづくりにおける「現場の課題」に対応した働き方改革についても、取り組みを進めているようです。

製品化に必要なあらゆる「プロセス」の最適化を模索

パイロットプラント内部は大きく分けて、「電極工程」「セル工程」「モジュールパック工程」「化成工程」という4つのエリアで構成されています。現状は建屋の環境整備が進められている段階でまだガランとした印象ではありましたが、設備の搬入は2024年8月からを予定しているそうです

画像: 縦135m、奥行き75m、約1万平方メートルの建屋で、およそ200名が働くことになるという。

縦135m、奥行き75m、約1万平方メートルの建屋で、およそ200名が働くことになるという。

このプラントでは製品/生産技術の開発フェーズを経て2026年度から生産能力(生産性)向上のフェーズに入り、2028年の生産フェーズへの移行を目指しています。素材系技術の検証・進化と生産工程の設計・熟成を並行して進めることになるようです。

日産の生産技術開発については改めて詳細に解説したいと思いますが、全固体電池の生産プロセスは、電極の原材料となる物質を均一に混ぜる作業(分散)や、フィルム化されたものを均等に加圧して厚みを均一化する作業などに、高度な精密さが求めれるそうです。

画像: 2022年、試作生産設備が公開された際に公開された工程の一部。「均一化」が精度と性能向上のカギを握っているようだ。

2022年、試作生産設備が公開された際に公開された工程の一部。「均一化」が精度と性能向上のカギを握っているようだ。

新設されるパイロットプラントでは、そうした各プロセスでの生産技術開発における課題解決を目指した検証、進化が進められます。料理で言えば、目的とする味を表現するための最適な食材の最適な組み合わせを確かめながら、最適のレシピを確立していく作業が並行して進められるわけです。

興味深いのは、エンジンや従来の生産現場で培われたさまざまなノウハウが、全固体電池製造工程の進化にも生かされている、ということです。たとえば電極工程における品質悪化について問題、仮説、実験、検証のスキームにも、かねてから熟成された技術が生かされているそうです。

将来的に、このパイロットプラントで熟成された工程、生産技術は世界各地の生産拠点に展開されることになります。そのノウハウは日産本体だけでなく、サプライヤーに対してもおそらくは提供されることになるのでしょう。いわば、次世代パワートレインの生産作業に従事する作業者たちのための、トレーニングセンター的な役割も担うことになります。

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