リファインされたV12エンジンに8速DCTを組み合わせる
12 チリンドリという車名は、イタリア語で「12気筒」のこと。それはつまり、フェラーリが初めて世に送り出したエンジンである自然吸気のV型12気筒を継承していることを意味している。
フロントミッドシップ搭載される6.5LのV12エンジンは、一部はスペシャルシリーズの812 コンペティツィオーネに採用されたものだが、新バージョンとなった。最高出力は830ps、最大トルクは678Nmを発生。しかも最高回転数は9500rpmに引き上げられた。このパワートレーンには、F1テクノロジーがフィードバックされている。
このエンジン、ほとんどの改良点はトルクデリバリーの最適化に集中された。可変ジオメトリー吸気ダクトやアスピレーテッド トルク シェイピングなどにより、加速に影響を与えずにトルクの感覚を向上させ、ドライビングプレジャーを高めた。しかも、新たな排気システムはEU6Eなど最新の排出ガス規制に準拠するように開発されている。
組み合わされるトランスミッションのDCTは8速(812は7速)となり、21インチの大径タイヤの採用もあり、低速ギアでのタイヤのトルクを増大させて加速性能を向上し、また高速での航続距離を伸ばしている。さらに後輪操舵も備え、高速コーナリングの安定性や低速時の取り回しを向上させている。
今までのモデルとは異なる、シームレスなスタイリング
フラヴィオ・マンツォーニとフェラーリ スタイリングセンターによるチームが手がけたスタイリングは、1950〜60年代の伝統的グランドツアラーをインスパイアしたものだ。先代にあたる812 スーパーファストやコンペティツィオーネとは異なり、デザインはクリーンなラインで構成されている。シルエットは非常にすっきりとしており、ディヘドラル(上反角)形状からテールまで流れるように続く。往年の名車「デイトナ」を彷彿とさせる。
リアフェンダーはたくましく力強い印象だが、フロントフェンダーは流麗な造形のボンネットと一体化している。フロントまわりでは伝統のグリルは廃され、巻きついた1本の帯の中にヘッドランプが組み込まれ、ブレード状のデイタイムランニングランプが備わっている。
テールランプもリア全体を横切る凹んだブレードの中に埋め込まれている。またリアスポイラーの代わりにリアスクリーンと一体化した2個の可動フラップを採用して、特徴的な三角形のテーマを作り出した。ボディカラーのフレーム表面をトレースして、リアウインドーのテーマと共鳴させ、黒いスクリーンを特徴とするキャビンの残りに部分に有機的に溶け込ませる手法も独特だ。