3年目の水素エンジンGRカローラは、航続距離とCO2回収力を拡大
スーパー耐久レース「ST-Qクラス」で戦うレースマシンたちは内燃機関を搭載しながら、CO2排出を実質ゼロにする「出さない技術」を磨いてきました。主にカーボンニュートラル燃料(CNF)の実証実験的なイメージが強いのですが、実際にはさまざまな領域での環境負荷低減技術が磨かれています。

液体水素エンジンGRカローラに採用された新しいCO2回収装置。
たとえばトヨタGAZOO レーシングは、液体水素エンジンGRカローラを年々進化させる中で、CO2回収技術を投入。内燃機関が持つ「大気を大量に吸気する特徴」と「燃焼により発生する熱」を活用してCO2を回収する装置をエンジンルームに装着しています。
レイアウト的には、エアクリーナー入口にCO2を吸着する装置を、その隣にはエンジンオイルの熱によってCO2を脱離する装置を設置しています。脱離されたCO2は吸着溶液を収めた小型タンクに回収される仕組みです。

「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」のドライバーとして、近藤真彦が参戦。MORIZO、佐々木雅弘、石浦宏明、小倉康宏、TGR-WRTチーム代表のヤリ=マティ・ラトバラとともに新たな挑戦に取り組む。

搭載する液体水素タンクの形状を、従来の円筒形(写真右)から楕円形(同左)に変更することで車内スペースを効率よく活用しながら、約1.5倍の容量を実現。2022年までの気体水素搭載時と比べると、水素搭載量(航続距離)は2倍になっている。
昨シーズンの2023年富士最終戦では、装置内でのCO2の吸着と脱離の工程をメカニックが手動で切り替えていましたが、走行中にCO2吸着フィルターをゆっくり回転させることで、吸着と脱離の工程切り替えを自動で繰り返す機構を採用しました。
新しい液体水素エンジンGRカローラはほかにも、レース中の作業効率を高めるための技術的改善が施されています。液体水素を昇圧してエンジンに送るポンプに、Dual-Driveと呼ばれるクランク機構を導入して耐久性を向上、昨年の24時間では2回の交換が必要でしたが今回は、無交換での完走を目指します。