あえてワゴンを選びたくなるほど美しいシルエット
今、「スタイル」という言葉を意識させるクルマと言えば、ワゴンではないだろうか。SUVが乗用車の基本形となり、今やワゴンは世界的に退潮気味。求められているのはヨーロッパや日本ぐらい。けれど、それをあえて選ぶのは、うまくやれば粋になる。
室内の広さや荷室の容量を欲する人にとっても、ワゴンはもはや自然と手が伸びる存在ではない。室内の広さ、容量を重視するならSUVがあるし、背の高いクルマがイヤならスポーツカーやセダンでいい。そんな中で見ればワゴンは、とくに今となっては中途半端な形態なのかもしれない。
けれど、だからこそワゴンは乗る人の嗜好の強さや、譲れないスタイルを色濃く映し出す。SUVを選んでおけば無難なのに、ワゴンに食指を伸ばすのは、一体どんな人なのか。このクルマでどんな週末を過ごしているのか。そうしたことを想像させるのだ。
ここで登場させるメルセデス・ベンツEクラス ステーションワゴン、そしてBMW5シリーズ ツーリングは、改めて言うまでもなく、輸入ワゴン車の中でも最高峰に位置する存在である。これらに乗って得られるものは何か。それこそスタイルをアピールできる選択となるのか。じっくりと乗って、検証してみた。
メルセデス・ベンツEクラス ステーションワゴン「流麗さを誇りたい」
メルセデス・ベンツEクラス ステーションワゴンは、1月に登場したばかりの新型である。試乗車は2L直4ターボエンジンを積むE200ステーションワゴン アバンギャルドだ。
まず視線が向かうのは、美しいフォルムではないだろうか。
長いボンネット、短いオーバーハングにセットバックしたキャビンという構成はセダンと同様。その上でステーションワゴンは、リアに向かってなだらかに落ち込んでいくルーフラインによって、伸びやかな印象が一層強調されている。
今や全長はセダンとまったく変わらない。それなのにステーションワゴンの方が断然低く、長く感じられるほどである。
私が以前に愛用していたS124型の300TEは、機能に徹したまさに箱のようなデザインがかえって魅力だった。それが次のS210型あたりから徐々に変化してきて、今や流麗さがセールスポイントにすらなっているのだ。