島下泰久かく語りき「今もなおクルマはこうあるべき」
内燃エンジン時代から電動化への、そしてアナログからデジタルへの橋渡しだと謳って登場した新型メルセデス・ベンツEクラス。その旨味を最大限に味わえるモデルが、E350e スポーツ エディションスターだ。
そのパワートレーンはプラグインハイブリッド。25.4kWhという大容量のバッテリーを搭載することで、EV航続距離は112kmにも達する。つまり充電環境が身近にあれば普段はBEVと同じように使うことができ、それでいて長距離移動などの際にもインフラに使い勝手を左右されることがない。
電動化されたクルマに乗りたいけれど充電環境が・・・という私と同じような境遇の人にとって、これは現時点での理想解と言ってもいいだろう。
電気モーターだけでも最高出力は129ps、最大トルクは440Nmもあるだけに、走りにはとても余裕がある。しかも当然、静かで滑らか。至極快適だ。
そんな走りには卓越したシャシ性能の貢献も大きい。とくに、AIRMATICサスペンションとリアアクスルステアをセットにしたオプションのドライバーズパッケージ装着車のフットワークは、しなやかなストロークで入力をいなしながらも常に姿勢をフラットに保ち続ける、いかにもメルセデスらしい乗り心地と、小さな路地を曲がることすら喜びに変える心地良い旋回性能を両立していて唸らされるのである。
外観デザインはロングノーズの典型的なFRスリーボックスセダンのそれで、ストレートな美しさを誇る。物議を醸したテールランプのスリーポインテッドスターも、実車を見れば案外馴染んでいて、すぐに違和感はなくなった。
これもオプションのデジタルインテリアパッケージを選択すると、MBUXスーパースクリーンが標準に。先進感としてはエクステリア以上であることは間違いない。しかも実際に使ってみれば、とくに音声認識の精度は見事というほかなく、まさに人とクルマとのつながり方が新たな時代に入りつつあることを実感させるのだ。
橋渡しと言っても必ずしも過渡期という意味ではなく、今を突き詰めていった延長線上にこそ未来はある。新型Eクラスに乗ると、メルセデス・ベンツからそんなメッセージを受け取ったような気になる。長い間、乗用車のベンチマークとして敬われてきた存在は、今もなおクルマはこうあるべきというものを示し続けている。その象徴と呼べる存在が、まさにE350e スポーツ エディションスターだと思うのである。(文:島下泰久/写真:井上雅行)
【メルセデス・ベンツ E350e スポーツエディションスター 主要諸元】
●全長×全幅×全高:4960×1880×1485mm ●ホイールベース:2960mm●車両重量:2170kg ●パワートレーン:2L直4ターボ+モーター ●総排気量:1997cc ●エンジン最高出力:150kW(204ps)/6100pm ●エンジン最大トルク:320Nm(32.6kgm)/2000-4000rpm●モーター最高出力:95kW(129ps)/2100-6800rpm ●モーター最大トルク:440Nm(44.8kgm)/0−2100rpm ●トランスミッション:9速AT ●駆動方式:FR ●WLTCモード燃費:12.7km/L ●一充電EV航続距離:112km ●タイヤサイズ:前245/40R20、後275/35R20 ●価格:988万円