なぜ今、EVトラックやバンが注目を集めているのか?
日本だけでなく世界にも普及しつつあるEVトラックとバンですが、なぜここまで注目を集めているのでしょうか? その理由のひとつがいま多くの大企業や自治体が取り組んでいるSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)の13番目の目標「気候変動に具体的な対策を」を実現するにはEVトラックを採用することが有効だと考えているからです。
つまり地球温暖化を抑えるためのCO2排出量の削減の手段のひとつとして、EVトラックの採用が手っ取り早く効果的と考えられているのです。
このほかにもEVトラックやバンを導入するメリットはあります。集配車やゴミ収集車は住宅地などの人口密集地で運用されますが、そこで問題になるのが騒音や排出ガスです。バッテリーEV(BEV)のトラックであれば、エンジン音はなく走行時の騒音も少なく、排出ガスも出しません。
また、既存のエンジンを積んだトラックやバンは当然給油をする必要がありますが、多くの場合業務終了後にこの作業が行われています。そのぶん、ドライバーの負担が増えるわけですが、集配用車両をBEVに置き換えて、さらに営業所に充電設備を用意すればこの手間を減らせて、2024年4月から設けられたトラックドライバーの時間外労働の上限規制への対応の一助になるという見方もあります。
電動トラックの導入はメリットばかりではない
ただし、EVトラックの導入は現状では良いことばかりではありません。導入コストがエンジン車よりも高め、航続距離がエンジン車よりも限られるため短距離輸送にしか対応できない、バッテリーが重いぶんエンジン車に比べて荷物の積載量が減ってしまうなどの問題点もあります。
全日本トラック協会が2022年3月に策定した「トラック運送業界の環境ビジョン2030」では、車両総重量8トン以下の電動トラック(BEV、ハイブリッド)の保有台数の割合を2030年までに10%にすることを目標に掲げていますが、2023年3月時点では2.69%にとどまっており、この数字は2020年度からほぼ横ばい(厳密には微減)という厳しい現実もあります。
しかし、こういった問題が解決するまでトラックの電動化を待つという選択肢もまたありません。この原稿を書いている2024年7月初旬でも日本各地で最高気温35度以上の猛暑日が記録されるなど、20年前と比べても間違いなく気象条件は温暖化しており、その原因となるCO2排出量の削減は急務なのです。
今回の日本郵政の三菱 ミニキャブEVの導入や運輸業界の取り組みのように、「できることからひとつずつ、コツコツと」取り組んでいくということがやはり大切なのかも知れません。