テスラ ロードスター(2012年:最終モデル)
EV(電気自動車)は部品点数が少なく、モーターやバッテリーも供給を受けることが可能だから、既存の自動車メーカー以外の参入も増えるだろうと言われてきた。実際に多くのベンチャー企業などが挑戦しているが、法人需要や補助金頼みの普及を見込んでいるためかあまり安定せず、早々と撤退している例も少なくない。そんな中でほとんど唯一の成功をみせている(編集部註:2012年)のがテスラ モーターズだろう。
2003年にカリフォルニアのシリコンバレーで設立されたテスラ モーターズは2008年にロードスターを発売。他のメーカーのほとんどがシティコミューター的なEVで環境性能の高さや燃料コストの安さをクローズアップしていたのに対して、EVの圧倒的にトルクフルな走りを最大のアピールポイントとしてスポーツカーを仕立ててきた。車両価格はかなり張るが、熱狂的なユーザーを獲得。自動車本来の魅力を際立たせるというシンプルにして本質的な戦略が、成功に導いたのだろう。
テスラ ロードスターの生い立ちはとてもユニークだ。軽量・高剛性なプラットフォームとして定評のあるロータス エリーゼ用のアルミバスタブ モノコックを使い、オリジナルデザインのCFRP製スキンをまとっている。EVの要となるバッテリーはノートパソコンなどに広く使われている18650型のリチウムイオンで、6831個も搭載。これは規格品なので、さまざまなメーカーから調達が可能で価格もこなれているというのがメリットだ。
「パソコン用でちゃんと走るの?」と懸念する人もいるだろうが、一度乗ってみるといい。ゼロ回転から最大トルクを発生できる電気モーターの特性で発進の瞬間から強烈な加速Gに襲われ、97km/h(60mph)までわずか3.7秒で達するのだ。これはポルシェ911だとGT2でなければ出せないタイム。今(編集部註:2012年)ではメルセデス・ベンツとトヨタが、テスラ モーターズと提携してEVシステムの供給を受けたり共同開発したりするぐらいになっているのだ。