スバルならではの専用チューニングが施された足まわり
トヨタとスバルは2005年10月に業務提携をしているが、それを発展させ新たな協力関係に合意したのは2008年4月のことである。これによりトヨタからスバルへの小型車のOEM供給が決まった。その第一弾がこのトレジア(トヨタ ラクティス)である。ちなみにスバルのOEMモデルは、ダイハツからの軽自動車のルクラ、プレオ、ディアスワゴン、登録車のデックスに続く5モデル目となる。
「宝物」という名前が付けられた、スバルの新しいクルマが目指したのは、クラスレベルを超えたコンパクトカーである。それは日常の使い勝手に特化した運転のしやすさや大容量のラゲッジルーム、スバルらしい走りに表現されている。
大容量ラゲッジルームは、5人乗車時429Lを確保する。これはインプレッサの301Lと比べるとプラス128Lにもなる。ラゲッジルームの高さも910mmとインプレッサ比でプラス133mmも高い。つまり、高さのある荷物でも積みやすいということ。またラゲッジルームのフロアには、フレキシブル2段カーゴボードが用意される。これは通常時の荷室高910mmが、カーゴボードを下げることで荷室高がプラス120mmの1030mmとなり、さらにカーゴボードを取り外せば1200mmにもなるというもの。他にもラゲッジからワンタッチでシートを格納できるなどアイデアも多彩だ。
ラインナップするのは、1.3Lが「i」と「i-L」、「i-S」、1.5Lが「i」と「i-L」、「i-L Panorama」、「i-S」、「i TYPE EURO」の7グレードとなる。とくに「i TYPE EURO」は、「i-L」の内外装にスプリングのバネ定数やスタビライザー径の変更など、専用チューニングが施された足まわりを組み合わせたスバルらしいモデルである。トランスミッションは全車CVTで、1.5Lエンジンには4WDシステム搭載車も用意される。
スバル トレジアとトヨタ ラクティスの大きな違いは、やはりエクステリアになる。六連星が付けられたウイングモチーフのフロントグリルはスバルファミリーの一員であることを主張し、リアのゲートガーニッシュもフロントグリル同様にメッキが使われスポーティな雰囲気を漂わせるデザインとなっている。ラクティスの新しいアイコン“1本アームワイパー”はトレジアにも採用されている。
「クルマで走ることは単なる目的地への移動ではなく、歓びを存分に味わうことのできる格好のステージである」とスバルはトレジアのカタログで謳っている。同感だ。トレジアではどのような歓びが味わえるのか、期待に胸が躍る。試乗に借り出したのは「1.5i TYPE EURO」。パドルシフトが装備されたモデルである。
背の高いMPVから想像できないほど安定感のあるコーナリング
感心したのはレスポンスよくスムーズに回る1NZ-FE型1.5Lエンジンで、パフォーマンスはかなり高い。ただ、高回転まで回すと、エンジン音が騒がしくなるのは仕方のないところか。
1.3Lエンジンはアクセルペダルを踏み込んだときに非力で物足りなさを感じたが、1.5Lはそうした印象は受けない。ちなみに最高出力は、1.3Lが95psだが1.5Lは109psとなる。車両重量1100kgぐらいのクルマでは、この14psの違いが大きいということなのだろう。
1.5Lに標準装備(1.5iを除く)されるパドルシフトを使えばワインディングを攻めるのも楽しい。サスペンションを専用チューニングした「TYPE EURO」の足がしっかりと働いているので、コーナリングは背の高いMPVから想像できないほど安定感している。
さらにハンドルやシートから伝わってくるインフォメーションが多く、姿勢も安定しているのでハイスピード域でも安心して走り抜けることができた。
トレジアは、スバリストが納得できるスバルらしい走りが味わえる、そんなコンパクトカーに仕上がっていると言っていいだろう。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:島村栄二)
スバル トレジア 1.5i タイプユーロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:3990×1695×1585mm
●ホイールベース:2550mm
●車両重量:1110kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1496cc
●最高出力:80kW(109ps)/6000rpm
●最大トルク:138Nm(14.1kgm)/4400rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●車両価格:183万2250円(2011年当時)