外部充電により約61 kmのEV走行を可能に
ホンダがクラリティ フューエルセルの販売を終了してから、すでに3年ほど。その間にトヨタは、MIRAIに続く新たなFCEV(=燃料電池自動車)としてクラウン セダンのFCEV版を追加してきたが、一方で水素充填インフラの整備はいまだスピードが上がらず、界隈には停滞感も漂う。
そんな中、ようやくの登場となるホンダの新しいFCEVが、CR-V e:FCEVである。これは単なる新たな選択肢の登場ではない。注目すべきは「e:」の車名のとおり、大容量バッテリーを積み外部充電機能を備えたプラグインFCEVであるということだ。
日本未導入の新型CR-Vをベースとする車体には、リアアクスルの前と上に置かれた計2基の高圧水素タンクのほかに、ホイールベース内側のフロア下に容量17.7kWhの駆動用バッテリーを搭載する。FCEVとしての一充填走行距離は621km。それに加えて、外部充電により約61 kmのEV走行を可能にしている。
かつてメルセデス・ベンツGLC FCELLも挑んだ外部充電機能を備えたFCEVの狙いは、水素インフラが脆弱なところでの利便性向上だ。水素の残量が少なくなってきた時でも、充電施設があれば電気を継ぎ足しながら目的地に辿り着ける、レンジエクステンダー的な利用法である。あるいは、普段は外部電源からの充電によりEVとして使い、長距離を行く時に水素を使うプラグインハイブリッド的な活用法も考えられる。いずれにしても、使い勝手の幅が大きく広がることは間違いない。
ベースとなる車両と比べて、110mmも延長した理由
外観上のベース車との一番の違いは110mmも伸ばされたフロントオーバーハングだ。これは主にFCユニット、その冷却系などを収めるためだが、実際にはそのうち50 mmほどはデザインのために費やされているのだという。正直、真横から見ると鼻先が長過ぎる感は否めないが、斜めから見ると悪くない気も。このあたりは是非とも実車を見て評価してほしい。
インテリアは、ダッシュボードにメッシュ調のインサートがセットされた最近のホンダ車に共通する雰囲気。ステアリングホイールにはシンセティックレザーが、シートにはバイオ素材を裏地に用いたプライムスムースが使われるのは、環境意識をくすぐるのみならず、前者は低熱伝達、後者はタフさというメリットも併せ持つ。
苦労の跡がハッキリ見えるのが荷室の設えである。電動テールゲートを開けると荷室には張り出し、段差がある。言うまでもなく、その奥に積まれた高圧水素タンクを避けるためのものだ。
そのデメリットを少しでも減じるために、荷室を上下二段に分けたり、後席背もたれを前倒しした際に荷室との段差を埋めたりするフレキシブルボードが標準装備されている。もちろんベース車には及ばないにしても、そのトランク容量は後席使用時で9.5インチのゴルフバッグ3セットを飲みこむほどであり、しかも長尺物も容易に積み込めるのは、やはりSUVならでは。これこそがホンダが新しいFCEVをCR-Vベースで生み出した理由である。