実用上十分な航続距離がもたらす高い満足感
電気自動車(BEV)に乗っていても、内燃機関(ICE)に乗っていたときの習慣から、燃費(BEVは電費)が気になっていたのだが、最近はそれもあまり気にしないようにしている。主に充電のタイミングや電欠しないように注意しているのは航続可能距離である。BEVに乗ると、新型車であっても、電費の細かい情報が得られないBEVもある。これは、電費の数字をそれほど気にしなくてもいいよ、という意図なのかもしれない。
このe-トロン GTは、満充電で航続距離が約390kmと表示されるが、この3カ月間のテストではそれに不満や不便を感じたことはなく、とても快適かつ優雅な時間を一緒に過ごせている。このクルマを所有することはかなり高い満足感が得られるだろう。
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Cd値の低さも航続距離の長さに貢献している。
以前にもお伝えしたが、BEVに乗っているとお気に入りの充電スタンドができるものだ、1カ月の走行距離が1000km程度であれば、そのお気に入りスタンドに2〜3 回立ち寄るだけで済む。150kWの高出力充電スタンドならSOC10%程度から30分もあれば80%以上まで充電できる。
また、この時期はゲリラ雷雨などに遭遇することもあるが、そんな時はアウディの四輪制御技術「クワトロ」の恩恵で安定した走りが味わえるのである。
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テスト車はオプションのレザーパッケージ仕様。
さらに進化を続ける e-トロン GT
ところで e-トロン GTだが、本国では2004年6月18日に改良版が発表された。新型は、S e-トロン GT/RS e-トロン GT/RS e-トロン GTパフォーマンス、の3モデル展開になる。注目は、一充電航続距離が最大で609kmに伸びたことや性能が向上したことである。
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左から新型S e-tron GT、RS e-tron GT Performance、RS e-torn GT。
S e-トロン GTは、500kW(679ps)、RS e-トロン GTは630kW(856ps)、RS e-トロン GTパフォーマンスは680kW(925ps)になり、0→100km/h 加速タイムはそれぞれ3.4秒、2.8秒、2.5秒となる。3秒切りのゼロヒャク! 正真正銘、スーパーカーしか持たないスペックだ。
コンフォート性能の向上も特筆点だ。新開発の2チャンバー/2バルブテクノロジーを採用したエアサスペンションを採用、さらに車両が停止しているときに乗降をサポートするエントリー機能も装備された。これはドアを開けると瞬時に車高が55〜77mmの範囲で上昇するシステムを備える。
さらにオプションだが、従来よりダイレクトなステアリングレシオを採用したオールホイールステアリングも用意する。これはリアホイールを最大2.8度回転させるもので約50km/hまではフロントホイールと反対方向に、約80km/h以上は同じ方向に操舵するもの。これにより最小回転半径は約0.6m短くなっているので日本の道路環境ではメリットも多い。
eトロンシリーズに使われるプラットフォームは「J1」だが、電気モーターなどの部品は新世代のBEVが採用する「プレミアムプラットフォーム エレクトリック(PPE)」と共通だ。つまり、見えるところよりも見えないところの進化が大きいということだ。この原稿を書いている時点で日本仕様は発表されていないが、進化したe-トロンの導入も楽しみにしている。