空間的制約から解放されたデザインの妙
遡ること3年前。IAAモビリティ2021の会場で披露されたGクラスの完全電動モデルを示唆した「コンセプトEQG」は、Gクラスのアイコニックなデザインを活かしながら、いかにも未来のクルマ感を漂わせた雰囲気だった。23年のジャパンモビリティショーでもその姿が公開されたため、記憶に新しい人も多いだろう。

リアのデザインボックスを除けば標準モデルとの違いを見つけるのは難しい。正真正銘ゲレンデの装いだ。右ハンドル仕様もあり。
それから一転、市販版となった「G580 with EQテクノロジー(以下、G580)」は、これまでのGクラスとまるで区別のつかないコンサバティブな装いで登場した。これもひとえに、既存のゲレンデファンが、BEVとわかる容姿を見て失望しないための“守り”なのかもしれない。
実際のところ、内燃機関搭載モデルとディテールを見比べると差異点は少ない。
たとえば、本来エンジンルームを覆うボンネットフードは空間的制約から解き放たれたおかげでデザインの自由度が増し、空力性能に寄与するデザインとなったほか、リアホイールアーチには整流効果をもたらすエアカーテンが新設された、という程度である。
ただし唯一大きく異なるのは、Gクラスのリアデザインを象徴するスペアタイヤの代わりとして、充電ケーブルや工具が収納できるデザインボックスが備えられたことである。汚れたケーブルを車内に入れることなく収納できる、という彼らの謳い文句は、なるほどGクラスに相応しいアイデアであり、感心させられた。

インテリアに大きな変更点はないが、限定車「エディション1」には電気を意識したブルー加飾が散りばめられる。
インテリアに目を転じると、それだけでG580と気が付く人はほとんどいないと思われるほど、内燃機関搭載モデルとの違いが見当たらない。逆に言えば、これぞGクラス!という雰囲気はそのままである。
実際にはデジタルメーターはBEV専用のデザインだし、試乗車はG580の導入を記念した限定車「エディション1」で、随所に電気を意識させるブルーの加飾が施されていたが、とはいえエクステリア同様、らしさ全開の装いに変化はない。