安心して使える安全技術にこだわるトヨタ
トヨタ自動車のクルマ開発センターでフェローに就任した御沓悟司(みくつ さとし)氏は、同社が行った安全技術説明会の場で「私たちトヨタは安全技術を必要な時に作動させる、言い換えれば、必要ではない時に作動しない不要作動にこだわっています」と説明しました。

トヨタ自動車 クルマ開発センター Fellow 車両安全技術担当の御沓 悟司氏。1990年に同社へ入社して以降、ずっと車両安全技術を担当してきた。2024年9月に現職に就任。
そう語る背景に、近年増加する予防安全技術がもたらすリアルワールドでの課題があるといいます。たとえばカメラやレーダーがモノの陰や道路のヒビ割れを歩行者と勘違いしてウォーニングを鳴らしたり、標識の誤認をしてしまったり・・・と、運転していて意図せずドキッとするこうした場面を経験したことがある方もいるのではないでしょうか。
そうした誤認識・誤作動でユーザーに迷惑をかけないこと=安心感と捉えるトヨタの安全思想は、リアルワールドにおいて200万kmに及ぶ走行検証を実施し、上記のようなトラブルを防ぐ取り組みを行っています。
その要となる予防安全技術や運転支援技術をこのほど、体験することができました。体験したのは3つ。
駐車時の運転を支援する「アドバンストパーク」、アクセルペダルの踏みすぎや踏み間違いを検知・抑制する「プラスサポート」、前方障害物を検知して緊急ブレーキを作動させる「パーキングブレーキサポート」です。
フレキシビリティに富んだ実用的な駐車支援
まず試したのはアドバンストパーク。現行型ヤリスで初採用されたこれは、いわゆる駐車支援技術のひとつです。目指す駐車位置を車両がカメラを使って認識、ハンドルやアクセル・ブレーキ操作をクルマが自動で行ってくれるという機能を司ります。
こうした機能自体は自動車メーカー各社が持ち合わせているものですが、トヨタのそれの凄いところは「正確性」と「柔軟性」です。
まずは実際に後退による駐車支援を体験しました。道路幅5m以上、駐車幅2m以上を条件に作動するのですが、その切り返しや「まっすぐ駐車できる」感覚は想像以上の仕上がりです。

試乗車は2024年12月に発表されたアルファードPHEV。電子シフトを採用するため、駐車支援時のシフトチェンジをクルマが自動的に行ってくれる。
そして驚いたのは、出庫支援を行ってくれること。センターディスプレイに右出庫/左出庫と選択できるアイコンが表示され、進みたい方向を選ぶとクルマが自動的に駐車位置から出発してくれます。
さらに、このアドバンストパークの柔軟さに痛感するのは「前向き駐車」にも対応していることです。上記のプロセスで駐車をしてくれるのはもちろん、前向き駐車の場合でも後退出庫サポートをしてくれます。
と、いやいや自分で駐車しなさいよ・・・と熟練ドライバーの方に言われてしまうかもしれませんが、旦那さんの大切な愛車を平日は奥さまが運転、けれど奥さまにとっては大きすぎて・・・みたいな場面においても有効的ですし、「ここ停められるかな」という不安を解消してくれるサポート技術と捉えれば、心強いことに越したことはありません。
トヨタ自動車 デジタルソフト開発センターでチーフプロジェクトリーダーを務める鯉渕 健氏によれば、同社の安全技術には「ガーディアン(=守護神)」という考え方があるといいます。
すなわち、クルマにとっての安全技術はドライバーの守り神としても機能できるということです。まさにアドバンストパークでは、その考え方を感じることができました。