スムーズかつ素早い反応、魅力的な8速ATの採用
120dアーバンラインに乗り換える。ディーゼル仕様はおそらく日本には輸入されないだろうが、このクルマにはオプションで設定される8速ATが搭載されていたので、これを中心にレポートしよう。
この8速ATは、なんと7シリーズにも搭載されているZF製のトルクコンバーター式スポーツ トランスミッション。そのシフトワークはデュアルクラッチタイプが羨むほどスムーズで、しかも素早い。また、パドルシフトも装備していて、街中での頻繁なシフトチェンジからスポーティ走行までカバーする。8速ともなればマニュアルではとても使いこなせないが、ATでは多段化はとても有効になるということだ。
120dにはこれまでと同じ排気量1995ccの直噴ターボディーゼルが搭載されているが、最高出力は184ps、最大トルクは380Nmとパワーアップされている(従来は177ps/350Nm)。0→100km/h加速はこの8速AT仕様で7.3秒、最高速度は228km/hと、118iのガソリンターボ仕様を上回る性能を持っている。アーバンライン仕様ということもあって雰囲気はシックでおとなしい感じであったが、いざ走らせるとかなりスポーティだった。
また、このクルマにはオプションのドライビングエクスペリエンスが装着されていた。これはセンターコンソールに設けられたスイッチで車両の設定を変更することができる、いわばドライブロジックと言えるもの。エンジン特性、ATのシフトプログラム、シフトスピード、DSCの作動などを変更することができるというものだが、ECO PROモードを選択すると、消費燃料を抑える効率的な運転が可能となるというのが大きなポイントだ。BMWの発表によれば、このプログラムを使うと燃料消費は100kmあたり4.4Lになるという。

F20型2代目BMW 120dアーバンライン。2L直4ディーゼルターボは184ps/380Nmを発揮。118iよりむしろトルクフルだが、アーバンラインということもあり、落ち着いた雰囲気。
2011年10月に世界同時発売決定、日本でもおそらく同時期
新型1シリーズがすべての面で熟成され、FRコンパクトハッチバックとしていよいよ完成形とも言える進化を果たしたのは確認できたが、その試乗会のプレゼンテーションにおいて、BMW AGの広報担当副社長ウルリッヒ・クニープスがこの新型1シリーズを「ファイナル デスティネーション」と表現したのには驚いた。
これはどういう意味なのか。最終形とはいわゆる究極の形、つまり完成形ということなのか。それとも、これが最後の1シリーズということなのか。
たしかに、1シリーズはこの世代を最後にFRレイアウトをやめ、UKLと呼ばれる新しい小型FFプラットフォームで構築されるニューモデルへと変身すると噂されている。しかしあえて、新型車の試乗会で「ファイナル デスティネーション」という言葉を使ったのは、このモデルに対する絶対の自信があるからに違いない。
なんとも意味深な言葉だが、「このコンセプトを捨てるのは惜しい」という気持ちも含まれているのだろう。コンパクトなFRスポーツとして、BMWの純粋なDNAを持った理想のクルマができあがったと理解したい。
思えば、2004年に、初代1シリーズが登場した時、周囲の反応は冷ややかだった。ほとんどの自動車関係者は懐疑的かつ批判的で、「コンパクトクラスで後輪駆動なんて重くて、高くて、そしてスペースの無駄だ」と一笑に付した。ところが、そんな声をよそに、初代1シリーズは登場するや大ヒットを記録し、2010年までの7年間に120万台が生産されたのである。そのBMW特有のダイナミックな走りは、室内空間の狭さやちょっと高めの価格というハンデを跳ね返す魅力を持っていたということだ。
この新型1シリーズは、2011年10月15日から欧州をはじめ世界同時に発売が開始される。価格もすでに決定しており、ドイツ国内の19%付加価値税込の価格は、116iが2万3850ユーロ(約274万円)、118iが2万6750ユーロ(約308万円)、116dが2万5950ユーロ(約298万円)、118dが2万7100ユーロ(約312万円)、118dが2万9250ユーロ(約336万円)となっている。新たに設定された8速オートマチックは2150ユーロ(約25万円)のオプションとなる。
日本導入モデルは116iと118iになると予想されるが、それがスポーツライン仕様となるのか、アーバンライン仕様となるのか、それとも両方が選べるのかはまだわからない。
また、新型1シリーズにはアダプティブヘッドライトやブレーキ機能付きクルーズコントロール、レーンディパーチャーウォーニング、ドライビングエクスペリエンスといった先進装備も用意されるが、おそらくこれらも日本仕様に設定されることだろう。
日本でもこの秋には発表されるはずで、発売も世界同時かあるいは少し遅れるくらいとなるだろう。ただし118iは120iとリネームされるかもしれない。(文:木村好宏)

F20型2代目BMW1シリーズのインテリア。質感だけでなく、スマートキーシステム、アダプティブヘッドライト、先進クルーズコントロールなど装備でももはやCセグメントの域をはるかに超えている。とくに写真の120dアーバンラインは、上質な素材を使ったトリムやクロス/レザーシートなどでシックに仕上げられる。
BMW 118i スポーツライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4324×1765×1421mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1370kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:125kW(170ps)/4800rpm
●最大トルク:250Nm/1500-4500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●最高速:225km/h
●0→100km/h加速:7.4秒
※欧州仕様 EU準拠
BMW 120d アーバンライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4324×1765×1421mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1440kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●排気量:1995cc
●最高出力:135kW(184ps)/4000rpm
●最大トルク:380Nm/1750-2750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●最高速:228km/h
●0→100km/h加速:7.3秒
※欧州仕様 EU準拠