2025年4月にラインナップ刷新で3モデル体制に

軽量MRを活かした、軽快でクルクルまわる回頭性の高さはワインディングロードで本領発揮、と言いつつ、高速道路や高い速度域でも安定して楽しめるのがA110のすごさ。
現行型は2022年にグレード体系や装備を見直し、1.8Lターボエンジンの出力を向上させるなど改良された。直近では2025年4月にラインナップを刷新。「GTS」「R70」「アニバーサリー(限定車)」の3モデル体制となった。
今回試乗したのはラインナップ変更前の「S」で、「GTS」と同じシャシースポールがベースとなる。登場時はもちろん、これまで改良時やスポーツカー特集と何度も紹介してきたA110だが、あらためて試乗すると、その軽快な走りには、思わずため息が出る。
それもそのはず、車両重量はわずか1110kgで、最高出力300psの1.8Lターボエンジンという組み合わせなのだから。こんなスポーツモデルはいまや他に存在しない。ボディサイズや車両重量だけでいえば、マツダ ロードスターが比較的近く、同じライトウエイトスポーツで括ることができるが、楽しさだけでなく、速さも追求するA110とはやや方向性が異なる。

リアミッドに搭載される1.8L直4ターボエンジンは最高出力300ps/最大トルク340Nmを発生する。アクセルペダルに連動したトルクの立ち上がりは瞬時で、後ろから蹴られるような強い加速力を持つ。
A110のような「アルミシャシの軽量ミッドシップ×ターボエンジン」の組み合わせは他に類を見ない。では、具体的にどんな魅力があるのだろうか。
シャシの完成度は極めて高く、サーキット走行まで考えられたSであっても、決してガチガチではない、洗練された乗り味を持つ。それでいてステアリングホイールと連動した、速くて正確な身のこなし。ワインディングロードではタイトな連続コーナーであってもヒラヒラと回っていく。
ここにこのクルマのすべての魅力が詰まっている気もするが、A110のすごさはそれだけではない。
アクセルペダルを踏み込んだ時の出力の立ち上がりは、瞬時で、時に構えてしまうが、そんなことは心配無用の扱いやすさも備えている。スポーツカーとして他に何が必要となるのか。
安全性への配慮が不可欠な現代においてはこれ以上の刺激は望むべくもないだろう。
初代にインスパイアされた見た目も、流麗なボディラインをいかして現代風に仕立て上げ、どこか洒脱で、洗練されたムードを持つ。デビューから8年経ったいまも古さを感じさせることはない。