乗りやすさが際立つ「エンジン」と「足まわり」

従来より20ps向上して最高出力265ps/最大トルク370Nmとなった2L直4ターボエンジン。始動時のエキゾーストの重低音や心地よい吹け上がりも魅力的。
第一印象は「快適で乗りやすい」。搭載する2L直4ターボエンジンは、先代比で20psアップの265psを発生する。もちろん、日本の公道でそのすべてのパフォーマンスを体感することは難しいが、日常域での扱いやすさと、合流や追い越しでの余裕は十二分。
とくに洗練されたパワーデリバリーが印象的だった。アクセルペダル操作に対する応答も素直で、意のままに速度を調整できる感覚がある。これなら長距離移動でもストレスが少ないはずだ。
スポーツサスペンションに加え、試乗車にはアダプティブシャシーコントロール(DCC)も装着。走行状況に応じてダンパーの減衰力が自動で調整されることで、街乗りではフラットで快適な乗り味を維持しつつ、コーナーではしっかりとロールを抑えてくれる。
乗り心地とハンドリングの両立という難題に対して、絶妙なバランス感覚で応えてくれる仕上がりだ。GTIらしい高性能を持ちながら、決してガチガチになりすぎないところが魅力と言える。
今回の試乗を機にあらためて過去のGTIの記事を読み返してみた。すると、初代こそ「荒々しさ」もあったようだが、基本的に歴代モデルは「バランスの良さ」が共通項。今もそれをきっちりと引き継いでいるのだ。過激すぎず、しかし十分に刺激的で、日常でも楽しめる。
そんな懐の深さこそ、GTIという存在が長年愛され続けてきた理由のひとつだろう。
なお、2025年5月号では西川淳氏がBMW1シリーズと比較試乗を行っており、「刺激的であるには違いないが、Cセグメントやホットハッチという枠を超えた走りのクオリティ」と評している。まさにゴルフGTIの完成度の高さを裏付けるコメントと言えるだろう。
Rほどハードじゃなくていいけれど、eTSIではちょっと物足りない。そんな人にとってGTIはまさに「ちょうどいい」選択肢となるはずだ。スポーティな走りと日常性の融合。その絶妙なバランスを今一度確かめてみてはいかがだろうか。
今回は都合により短期間の試乗となったが、機会があれば国内でのロングドライブもあらためて体験してみたいと思っている。次回以降もゴルフというクルマの懐の深さを引き続き探っていきたい。

オプションとなるが、より性能を引き出すためにはDCCは装着したい。デフォルトの「エコ」「コンフォート」「スポーツ」の3パターンでもしっかり性格が変化するが、「カスタム」で個別に調整することも可能だ。
【ゴルフ日本導入50周年記念】ゴルフ GTI マンスリーレポート
試乗期間:2025年6月13日〜6月30日
走行距離:862km
平均燃費:12.2km/L