モーターマガジンムック「ランサーエボリューションChronicle」が現在モーターマガジン社より発売中だ。ハイパワー4WD車の代表として多くのファンから支持されてきたランサーエボリューション。その変遷を詳細に解説した内容が好評を博している。ここでは、同誌からの抜粋をお届けする。今回は強力なヨーを発生するスーパーAYCの装着や、総合的な熟成の極みに達したエンジン、サスペンションにより、歴代でも最高の性能となったランサーエボリューショⅧについて解説しよう。

トルク移動量を増大したスーパーAYCが話題になったエボⅧ

画像: リアビューで目立つリアスポイラーには、量産4輪車としては世界初となるカーボン繊維強化樹脂(CERP)を採用している。

リアビューで目立つリアスポイラーには、量産4輪車としては世界初となるカーボン繊維強化樹脂(CERP)を採用している。

ランサーエボリューションVIIでACD(アクティブ・センター・ディファレンシャル)が導入され、新世代の4WD車として大きな一歩を踏み出したランサーエボリューション。その翌年、2003年に発売されたエボリューションVIIIでは、さらに進化を遂げた。この進化は、エボリューションIVからVへのステップに匹敵する大きな飛躍と言える。ACDとスーパーAYCの採用により、4WDでありながらFRのように振り回して走れる、まさに新時代の4WD車となったのだ。その驚異的な性能は、「こんなクルマが市販される時代なのか」と驚嘆させるに値するものだった。

画像: イメージを一新させたフロントセクションには、エアフローを最適化させるフロントバンパーとボンネットを採用している。

イメージを一新させたフロントセクションには、エアフローを最適化させるフロントバンパーとボンネットを採用している。

パワーユニットから準に見ていくと、従来の4G63型+インタークーラーツインスクロールターボを改良している。具体的には、動弁系の慣性モーメント低減やバルブスプリングの荷重軽減により、フリクションも低減した。これらにより最高出力は国内自主規制値である280ps/6500rpm}、最大トルクは40.0kgm/3500rpmを発生し、トルクは従来比で+1.0kgm向上した。特に3000〜5000rpmの太くフラットなトルク特性をさらに強化し、フレキシブルなエンジン特性を実現している。トルクの向上に対応し、ウォーターポンプの容量アップ、水室拡大によるターボチャージャーの冷却性能の向上、アルミ鋳造製ピストンと鍛造鋼製コンロッドの採用による高強度化を図り、耐久性と信頼性を向上させている。さらにパワーアップと耐久性向上を達成しながらも、エンジン全体で2.5kgの軽量化(エアコン装着車)を実現したのも注目された点だ。

トランスミッションは、GSRでは6速MTが標準装備となったのも大きな変更点だ。RSではモータースポーツのニーズを考慮し、17インチタイヤと組み合わせた6速MT仕様と、15インチタイヤと組み合わせた5速MTを標準装備とした2つの仕様を設定。6速MTは、発進加速を重視した1速、追い越し加速とギアの繋がりを重視した2〜5速、最高速向上を狙った6速により、エンジン性能を最大限に引き出す設計としている。細かい部分ではあるが、6速MTには誤操作防止機構としてリバースギアへのプルリングを採用した。国内モータースポーツではRSの5速MTが主に使用されたが、それにはスーパークロスギアを標準装備していた。このトランスミッションもエンジントルク向上に伴い、耐久強度と剛性が強化されていた。

画像: リアビューも基本的なデザインはエボリューションⅦと同一だが、リアスポイラーの造形もありワイド&ローに見える。

リアビューも基本的なデザインはエボリューションⅦと同一だが、リアスポイラーの造形もありワイド&ローに見える。

注目の駆動系だが、エボリューションVIIIは、ACD、スポーツABSによるオールホイールコントロール(AWC)を継承しつつ、新たに開発された「スーパーAYC」を採用した。これはリアデファレンシャル機構をベベルギア式からプラネタリーギア式に変更し、後輪左右のトルク移動量が従来のAYC比で約2倍に増大されていた。プラネタリーギアというのはコンベンショナルなATのトランスミッションの変速に使用している機構だが、これと増減速ギア、AYCの多板クラッチの利用によって、トルク伝達力を増幅する。

従来のAYCのベベルギア式はクラッチの締結力と増減速ギアで左右間トルクを制御していたが、プラネタリーギアによる確実なトルクの伝達を利用して、旋回性能とトラクション性能を同時に向上させた。従来のAYCでは多板式LSDに劣っていたトラクション性能も改善されている。それでもモータースポーツベース車のRSではACDのみを標準装備し、リアデフは機械式LSDでトラクション性能を重視した設定とする場合が多かった。

画像: サイドビューは新デザインのフロントマスクを含めると、より丸みが増した印象になる。繊細な6本スポークデザインのホイールが足元を軽やかに見せる。

サイドビューは新デザインのフロントマスクを含めると、より丸みが増した印象になる。繊細な6本スポークデザインのホイールが足元を軽やかに見せる。

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