2026年6月でアルピーヌA110が生産終了になることが決まった。次期型はBEVと言われているから、つまりこれが「最後の内燃エンジン搭載車」になる。そんな最終型A110のフルラインナップを試乗した。ブランド70周年の節目にA110が残した走る歓びをあらためて確かめる。(撮影:永元秀和)
内燃エンジンのA110を選ぶならどれだ?

タイトにみえるコクピットだが、身長180cmの大柄体型の筆者でもしっかりとドライブポジションを確保しながら運転ができる。多機能な現代のクルマが多い中、走りに必要最低限の装備としたまさにピュアスポーツカー。
3モデルすべてに共通していたのは、電子制御に頼らずドライバーの感覚を信じた「アルピーヌらしい軽やかさ」である。まさに、スペックではなく、感性に響くスポーツカーと言える。そこには創業者ジャン・レデレの「走りに情熱、軽さに美学」という哲学が脈々と息づいている。
やがて時代は電動化へと移るだろう。現代版A110を作ったアルピーヌなら、BEVでもきっと魅力的なスポーツカーを作ってくれるはず。しかし、内燃エンジンでしか味わえない鼓動や匂い、そして五感すべてで感じることのできる運転の歓びは、いま、このモデルでしか味わえないのではないか。
そんなことをふと考えると、「いましか乗れない、いま乗っておくべきスポーツカー」と言っても大げさではない。その走りに期待して購入しても、必ずや応えてくれるはず。いや、買わずに後悔するくらいなら……、生産終了のカウントダウンが進む今こそ、選ぶべき時だ。

次期A110はBEVの予定。このピュアエンジンを味わえるのもこれが最後になってしまうのかと思うと、やはり淋しいが、アルピーヌが作るBEVスポーツカーが我々にどんな楽しさを味あわせてくれるのか、期待したい。

