SUV戦国時代のいま、新型RAV4が選んだ大胆な方向転換
RAV4は31年前となる1994年、「アウトドアでも街でも楽しめるSUV」という新ジャンルを切り開いた存在だ。オフロード志向一辺倒だった当時のSUV像を覆し、日常と非日常をシームレスにつなぐ価値観を提示してきた。そのDNAは約30年を経た現在も変わらない。
今回登場した6代目RAV4は、その原点を踏まえつつ、時代の要請である電動化やソフトウェア化を正面から受け止めたモデルだ。単なるフルモデルチェンジではなく、「これからのSUVはどうあるべきか」というトヨタなりの回答が随所に盛り込まれている。

フロントは塊感のある「SUVハンマーヘッド」デザインを採用し、6台目に生まれ変わった新型RAV4。
新型RAV4の開発でトヨタが最も割り切った点は、「1台ですべてを満たすSUV」という発想を捨てたことにある。
ラインアップは、洗練と上質感を重視した「Z」、アウトドアユースを想定した「Adventure」、そして走りを追求する「GR SPORT(2025年度内発売予定)」という3スタイルに明確に分けられた。これは装備差ではなく、クルマの性格そのものを切り分けるという意思表示に近い。
「外で使うSUV」であることを視覚的に訴え
エクステリアデザインでは、SUVらしい力強さを前提にしながらも、各スタイルで明確な表情の違いを与えている。
Zはボディ同色バンパーと立体的なメッシュグリルを組み合わせ、都会的で洗練された印象を強調。バックドアガラスとリヤランプを一体化させたシームレスなリヤデザインにより、ワイド感と上質感を両立している。
一方Adventureは、ノーズピークを高めた専用フロントデザインや大型アーチモールを採用し、いかにも「外で使うSUV」であることを視覚的に訴える。単なる加飾ではなく、使い方を想起させる造形に踏み込んでいる点が特徴だ。

洗練とタフネスを同時に主張する新型RAV4のフロントフェイス。都会派の「Z(左)」と、アウトドア志向の「Adventure(右)」という2つの個性が、SUVの多様化を象徴する。

シームレスなリヤコンビランプとワイドな造形が特徴のZ。都会的な洗練を強調しつつ、SUVらしい安定感も併せ持つ。

アーチモールやバンパー下部の造形でタフさを演出するAdventure。アウトドアユースを想起させる力強い後ろ姿だ。
インテリアもまた、従来型からの進化が大きい。新型RAV4では、ディスプレイ、メーター、シフト操作系を島状にまとめた「アイランドアーキテクチャー」を採用した。水平基調のインストルメントパネルと組み合わせることで、SUVらしい見晴らしの良さと直感的な操作性を両立している。
エレクトロシフトマチックの採用により、センターコンソール周辺はすっきりと整理され、運転中の視線移動や操作動作も最小限に抑えられた。Adventureでは専用カラーや加飾によってアウトドア感を強調するなど、内装でもキャラクター分けが徹底されている。

水平基調のインパネと大型ディスプレイを組み合わせたZの室内。都会派SUVらしいクリーンさと操作性を両立する。

低彩度グリーンにオレンジアクセントを効かせたAdventure専用内装。アウトドアギア感覚で使えるタフな空間だ。

ワンアクション操作のエレクトロシフトマチックを採用。スイッチ類を集約し、視線移動を抑えた先進的な操作系だ。

前後席ともに余裕あるスペースを確保したZの室内。ホールド性と快適性を両立し、長距離移動でも疲れにくい。
ボディサイズは全長4600mm、全幅1855mm、全高1680mmと、従来型の扱いやすさを維持した。一方でパッケージングは見直され、荷室容量は最大749Lへ拡大。後席格納時の床面傾斜を緩やかにすることで、長尺物や大型ギアの積載性も向上している。
数値上の変化以上に、「日常からレジャーまで本当に使えるSUV」という思想が、パッケージ全体に反映された形だ。

後席格納時は床面がよりフラットになり、積載性を向上。749Lの大容量ラゲッジはアウトドアや長距離移動でも頼もしい。
新型RAV4の“多様化”とは、選択肢を増やすことではない。ユーザーに「どのRAV4を選ぶか」を真剣に考えさせるための、意図的な設計思想なのである。


