1989年に登場したマツダのスポーツカー、ロードスター。登場から35年以上を経た今もなお多くの人に支持されている。ライトウエイトスポーツカーのお手本であり続けている現行型に改めて試乗し、愛され続ける理由を探ってみた。(Motor Magazine 2025年4月号より。文:渡辺敏史/写真:永元秀和)

速さの追求よりも原点回帰を目指したND型ロードスター

4代目となるND型は専用設計の自由度が高まったことで、新たなアクションを起こすことができた。おそらくもっとも拘ったのは、初代に準ずるほどの圧倒的な小型&軽量化だ。当時の技術担当役員だった金井専務と、次世代商品の主旨について意見交換をさせてもらう機会があったのは2009年頃のことだったと思う。そこで昔気質のエンジニアだった氏は「次のロードスターやるんやったら800kg台目指さんかいって、現場に発破かけとりますわ」と笑っていた。

ちなみに当時、エアコンを装備するようになったロータス エリーゼの重量は900kgにほど近い800kg後半だ。各種要件を折り込みOEMクオリティを担保する廉価な世界商品として、その注文は無理筋にもほどがある。

この時はさすがにND型の形状的断片もなかっただろう、でもこの無茶振りでコンセプトワークにおいて先祖返りの意思は強く共有されたと推する。結果、ND型は各種衝突安全基準をクリアしながら全長比で初代よりも短く、最軽量グレードは990kgという、今から10年前と鑑みても破格のスペックで登場することになった。

画像: Sレザーパッケージ Vセレクションにはシートヒーター付きのナッパレザーシート(スポーツタン)が標準装備となる。

Sレザーパッケージ Vセレクションにはシートヒーター付きのナッパレザーシート(スポーツタン)が標準装備となる。

マツダが彗眼だったのは、日本仕様を含む一部仕向けに、初代よりも小さい1.5Lユニットを搭載したことだ。これすなわち、170psをマークする2Lユニットを搭載した先代より、どう転んでも遅いことを意味している。新型が旧型より遅いという商品企画は、普通のメーカーでは逆立ちしても通らないだろう。「この子は馬力で走るのではなく馬脚、すなわちシャシの総合力で走るクルマだ」と、訴えた作り手も認めた上役も、ロードスターを作り続けてきたことによって成熟したスポーツカー観を共有していたからこそ、実現できたことなのだと思う。

と、一方でそんなロードスターにも、一部のカスタマーの要望を汲んで2Lエンジンを搭載するグレードが設定されるという話もある。日本では既にRFが2Lで販売されているし、現に米国では幌モデルも2Lのみの設定だからして、開発云々において難しいことはないだろう。

搭載する2LのPE-VPR型は当初は吹けにガサツさが目立ったが、中身を隅々まで見直した2018年の改編以降は、サウンドも含めて1.5Lにほど近い軽快さを得るに至っている。RFとの車重差を勘案すれば1100kgは間違いなく切ってくるだろうから、高いギアでもトルクでグイグイ押してスイスイと加速する、安楽・快適なキャラクターとなるはずだ。

画像: 直4エンジンは前輪の中心よりも後方に縦に搭載。これも前後重量配分50:50を実現するための工夫だ。

直4エンジンは前輪の中心よりも後方に縦に搭載。これも前後重量配分50:50を実現するための工夫だ。

ともあれ選択肢が増えるのはいいことなので、マツダにおかれてはアフォーダブルというロードスターの精神性を大事にしていただければと思う。ちなみにグレードによっては1.5Lと2Lが選べる欧州の場合、概ねその差額は3000ユーロ程度のようだ。

でも一方で、1.5Lモデルの価値が2Lの登場によって削がれることはない。どころか、むしろその尊さを再認識される機会になるのではないかとも思う。

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