ゴルフへの搭載開始により普及が一気に進みそうだ
そのバッジが取り付けられた日本向けの最初のモデルとなったのは、2010年11月発表のシャラン。その後、昨年初頭に導入されたトゥアレグ/トゥアレグハイブリッド、フルモデルチェンジされたパサート/パサートヴァリアントと、その仲間を増やしてきた。そして、いよいよ今年1月、真打ちゴルフにも対応モデルが登場した。それがゴルフTSIトレンドライン ブルーモーションテクノロジーである。
モデル名からも想像できるとおり、ベースとなっているのはTSIトレンドライン。すなわちパワートレーンは最高出力105ps、最大トルク17.8kgmを発生する1.2LのTSIエンジンと7速DSGを組み合わせる。そこにブルーモーションテクノロジーとして、これまでのシャランやパサートなどと同様に、新たにふたつの機能が追加されている。
まず、ひとつはスタート/ストップ・システム。赤信号や渋滞などでブレーキペダルを踏んで車両を停止させた際に自動的にエンジンを停止させ、発進の際にはブレーキペダルから足を離せば、すぐに再始動が行われるという機構である。車両が停止している間の燃料消費は単なる無駄。それをカットするのである。
そして、もうひとつがブレーキエネルギー回生システム。これは従来、エンジン出力によって行っていたバッテリーの充電を、車両の減速エネルギーも使って行うことで、加速時には充電による負荷を低減し、余計な燃料消費を抑えるというものだ。
なお、ブルーモーションテクノロジー採用モデルでは、これらの採用に伴ってオルタネーターは加速時のフリーホイール化と減速時の発電量増加に対応した強化タイプとされ、バッテリーは電圧モニターECUが付いた強化型のAGMタイプに、そしてスターターモーターも耐摩耗性向上、リングギア強化を図ったものに改められている。何倍もの頻度ともなるエンジン再始動に耐えうるようにである。

バッテリーは通常モデルとは異なる専用タイプを搭載。このほかオルタネーターやスターターモーターなども強化されている。
当然、気になるのは燃費だ。ゴルフTSIトレンドライン ブルーモーションテクノロジーは、10・15モードで18.4km/Lという低燃費を達成している。従来のTSIトレンドラインが17.4km/Lだから、ざっと6%ほどの向上を実現したことになる。
では実際の走行フィーリングはどうなっているのか。従来と何か違いはあるのだろうか。キーをひねってエンジンを始動させ、DSGのセレクターレバーをDレンジに入れて発進する。ここまでのプロセスには変化はまったくない。わずか1500rpmで最大トルクを発生し、そのまま4100rpmまでキープする極めて実用的なエンジン特性は、市街地から高速道路まで舞台を選ばずゴルフをストレスなく走らせる。
ここで改めて感じるのが、7速DSGの走りへの貢献度の大きさである。段数の多さと素早い変速によって、エンジンの美味しいところを効率良く引き出してくれるというだけでなく、駆動系のダイレクトな締結感がもたらす繊細なレスポンスがクルマとの一体感を高め、実に気持ち良いのだ。
と、ここまではTSIトレンドラインと一緒なのだが、車両を停止させてそのままブレーキを踏み続けているとエンジンが停止する。そう、アイドリングストップが働くのである。
正確にはエンジン回転数が1200rpm以下、クーラント温度が25〜100度の間、エアコン設定温度と実際の室温の差が8度以内などの条件を満たしていると、エンジンが停止する。動作はきわめてスムーズだ。

アイドリングストップの作動はごく自然で、再始動もスムーズ。実際の走行でどれだけ燃費が向上するのか、興味深いところだ。
ここで改めてわかるのは、ゴルフが普段から静かなクルマだということである。これは遮音層を挟み込んだフロントウインドウほか、遮音そして吸音対策を徹底した結果で、エンジンが停止した途端、急に静かになるという感じにはなっていない。それもあってエンジン停止を殊更に意識させられることがないのである。
アイドリングストップ中はマルチファンクションインジケーター下段に「START」「STOP」「ACTIVE」の文字が切り替わりながら繰り返し表示される。こうして表示に動きがあると、単にインジケーターが点灯するよりも、システムが作動していることがわかりやすい。危険防止のためシートベルトを外したりドアを開けると再始動をキャンセルする機構も備わっているが、これなら停止したと勘違いする可能性は少ないだろう。
発進の際にはブレーキペダルから足を離すとエンジンが再始動するが、さすがにこれは一瞬とは行かず、一拍待つことになる。急いでいる時など焦ってアクセルペダルを深く踏み込むと、エンジンがかかった途端に回転が跳ね上がり、そこでクラッチが繋がるためドンッと衝撃を食らうこともある。それを防いで滑らかに走り出すには、信号など周囲の状況に気を配り、早い段階からゆっくりブレーキを解除してエンジンをかけ、落ち着いてアクセルオンしていくことを心がけたい。すべてクルマまかせではなく、自分の運転も少しだけ調整してやれば、燃費向上を気持ち良く実現できるのだ。
もうひとつの燃費向上技術であるブレーキエネルギー回生システムについては、加速が鋭くなるわけでも、あるいはBMWのようにインジケーターが付いているわけでもないので、それが働いているかどうか知ることことはできない。結果は燃費に示されるのみである。今回の試乗は短時間で、データを採ることはできなかったのが残念である。
今後、気筒休止システム、プラグインハイブリッドも
TSI+DSG、そしてブルーモーションテクノロジーによって、最新のフォルクスワーゲン車はどれも燃費を大きく向上させている。トゥアレグ ハイブリッドのようなモデルはある意味当然として、1.4Lのエンジンで登場したパサート、そしてシャランの衝撃度はやはり大きく、これが各モデルの、そしてフォルクスワーゲン自体のブランド力を大いに引き上げたのだ。
もちろん今後もその攻勢は加速していくことだろう。何しろ究極の目標は、2050年までにCO2排出量を現状比約20%削減することなのだ。とりあえず近いところでは、アウディ A1スポーツバック1.4TFSIに投入されたシリンダーオンデマンドテクノロー(気筒休止システム)が使われることになるだろう。さらに2013年にはアップ!やゴルフのEV版、そして他にプラグインハイブリッド車やいくつかのハイブリッド車もその仲間に加わるはずである。

ガソリンを無駄なく使う直噴技術と過給器を組み合わせることで、ダウンサイジングを図りながら力強い走りと優れた燃費性能を実現したのがTSIエンジン。ゴルフTSIトレンドラインに搭載される1.2TSIは、1.2L直列4気筒直噴ガソリンエンジンにターボチャージャーを組み合わせ、NA1.8Lと同等のトルクを発生する。
一方、ディーゼルについては、年頭に行なわれたフォルクスワーゲン グループ ジャパンの記者会見場でG.ドリザス社長は、近いうちの日本導入には否定的なコメントをしている。しかし、その燃費メリットはきわめて大きいことから、向こう数年というスパンにおいては、やはり検討課題として上がっているようである。
もっと近い将来の話をすれば、ブルーモーションテクノロジー採用モデルは今後もますます増えていくはずである。直近ではゴルフ ヴァリアントTSIトレンドライン ブルーモーションテクノロジーも登場した。従来、ヴァリアントはTSIトレンドラインにも1.4TSIを搭載していたが、こちらはハッチバックと同じ1.2TSIを搭載し、やはり同様に10・15モード燃費は18.4km/Lを達成している。
TSI+DSGがそうだったように、フォルクスワーゲンにとってブルーモーションテクノロジーは特別な存在として位置づけられているわけではない。幅広い、そして多くのユーザーに均しく恩恵をもたらすものである。フォルクスワーゲンを買うことが、すなわち環境に優しいクルマを買うことになる。それこそがこの技術の肝となる部分であり、また「Think Blue」の精神なのだ。(文:島下泰久)
フォルクスワーゲン ゴルフ TSIトレンドライン ブルーモーションテクノロジー 主要諸元
●全長×全幅×全高:4210×1790×1485mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1270kg
●エンジン:直4 SOHCターボ
●排気量:1197cc
●最高出力:77kW(105ps)/5000rpm
●最大トルク:175Nm(17.8kgm)/1500-4100rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:FF
●車両価格:263万円(2012年当時)



