【衝突から守る】衝撃を分散する「パッシブセーフティ」と緊迫の衝突実験
続いて、万が一の衝突時に乗員や歩行者を守る「パッシブセーフティ(衝突安全)」にも、抜かりなく力が注がれている。その実現にはボディの骨格構造をはじめ、エンジンや足まわり、外装の構造、素材の性質に至るまで、あらゆる要素が関係している。
今回、その取り組みを直にその目で見て体感してもらおうという計らいで、オフセット衝突の公開実演が用意された。場所はSUBARUが保有する実験施設だ。
ダミーの衝突用台車(1200kg)と、ファイブスター大賞を受賞したフォレスター(※実演車両はターボエンジン車)が対峙する。衝突設定ポイントの両側からそれぞれ50km/hのスピード(相対速度100km/h)で、互いの前面の半分同士がぶつかる「オフセット衝突」が再現された。

SUBARUが保有する衝突試験施設の様子。
自動車メーカーが公開している衝突試験の映像を見る機会はあっても、生で目撃する機会は滅多にない。さまざまな媒体社から集まった100人を超えるメディア関係者たちが固唾を飲んで見守る中、実験がスタートした。
準備が整いカウントダウンが行われると、空母のカタパルト(射出機)のような牽引機構によって、左右から台車とフォレスターが猛烈に接近。みるみるうちに距離が縮まり、次の瞬間「バンっ!」という、耳を劈(つんざ)くような激しい衝撃音をともなって激突した。

実演された新オフセット衝突試験のようす。相対速度100km/hで台車と衝突する。
衝突の瞬間、フォレスターのフロントセクションがグシャリと潰れ、その直後に後輪が数十センチも跳ね上がる姿が網膜に残った。と同時に、施設内に響いた破壊力を感じる想像以上の音に、メディア陣は一瞬言葉を失っていた。

衝突の激しい衝撃で車体後部が大きく浮き上がる様子。
しかし、現場のアナウンスで我に返り、車両を観察する余裕が生まれる。
衝突した右側の、フロントフェンダーとフロントドアの境界から前の部分は、約半分にまで押し潰されていた。ところが、その境界からうしろの居住空間(キャビン)は、ほぼ完全に元の形状を保っている。のちに行われた解説で、スタッフがフロントドアのノブに手をかけて引くと、何ら抵抗もなく普通に開いた。
これは、事故の際に乗員が自力で脱出、あるいは外部から救出できるよう、キャビンの形を強固に保つ「新環状力学構造ボディ」思想を盛り込んだ、フルインナーフレーム構造の「SGP(SUBARU・グローバル・プラットフォーム)」の設計の賜物だという。

前部は大きく潰れて衝撃を受け止めているが、キャビン部分はほぼ完全な形を保ち、乗員を保護している。
一方の衝突試験用の台車に目を移すと、衝突面に装着された緑色のハニカム構造のアルミブロックが、受けた衝撃の凄まじさと角度を物語るように変形していた。この変形具合を精密に解析することで、相手車両や歩行者へのダメージを軽減する「コンパチビリティ(相互安全)」構築のヒントを得ているそうだ。

専用の台車の前部に装着されたアルミハニカム部材が潰れたようす。
車内にはまだエアバッグ展開時のガスの匂いが漂っていて生々しかったが、多数のセンサーを装着されたダミー人形は、破損の痕跡もなく平然と座席に佇んでいた。内部を見回してもトリムや内張りに目立ったダメージはなく、エアバッグを見なければ、あれほどの衝撃を受けた空間とは思えない状態だった。潰れることで衝撃を吸収する「クラッシャブルゾーン」と、形を保って乗員を保護する「セーフティゾーン」の役割分担の鮮やかさを目の当たりにし、言葉では伝えきれない圧倒的な説得力を受けた。

エアバッグが展開し、乗員の頭部や胸部を守る。室内は大きなダメージを受けていないようだ。
ちなみに、SUBARU伝統の「水平対向エンジン」は、衝突時の衝撃で室内に押し込まれないよう、フロア下に潜り込んで脱落する設計になっている。実際にエンジンがぶつかりそうな前席足元付近を確認したが、室内の変形は見られなかった。

車体下方からエンジン下部を覗いてみる。画像からは大きな変形などは見られない。



