レクサスSC430、プジョー406スポーツ、トヨタ プログレに続く、旧車を実際に購入していろいろ楽しむ連載(大変、お久しぶりです)「ちょいふるジョイフル」第三弾は、14代目クラウンと相成った。通称「リボーン」・・・14代目との付き合いを通して、クラウンというクルマが体現していた「日本の最上級サルーン」としての価値と、「最後のアスリート」の魅力を、改めて検証してみたい。

5ナンバーサイズにこだわりながら、セダンらしさを追求

今回、仕入れたのは14代目クラウンの後期型、2015年式の「クラウン アスリートS-T」。

画像: 顔立ちのインパクトは歴代随一と言ってもいいだろう。2015年のマイナーチェンジで、フロントグリルがバンパー下端まで伸ばされるなど、ワイド&ローなたたずまいが強調された。

顔立ちのインパクトは歴代随一と言ってもいいだろう。2015年のマイナーチェンジで、フロントグリルがバンパー下端まで伸ばされるなど、ワイド&ローなたたずまいが強調された。

そもそもクラウンは1955年に初代が誕生して以来、一貫して日本で使うことに最適化されてきた正統派セダン。時代ごとに求められる「最先端」をふんだんに盛り込むことで進化し続け、日本を代表する高級車としての地位を確立してきた。

そんな中でも2012年にデビューした14代目「S210系」は、とりわけセンセーショナルなフルモデルチェンジを果たしていたと思う。なんと言っても、デザインのインパクトが凄かった。巨大なグリルに巨大な王冠エンブレム、吊り上がったヘッドライトのコンビネーションは、スポーティというよりも戦闘的ですらあった。まさに「イカつい!」面構えだ。

ディメンションは、全長4895×全幅1800×全高1450mm。日本の高級車として「5ナンバーサイズ」にこだわっている。一方で、フロントフェンダー上端の筋肉質な盛り上がりや、わずかに凹面形状とすることで力強い張り出し感を演出したボディサイドのプレスラインを採用。「ダイナミックさ」を表現するデザイン性に関しても、実に巧みだった。

画像: わずか5.2mの最小回転半径など、「日本専用車」としての立ち位置にこだわり抜いて開発された。後期モデルでは、リアランプまわりの立体感も強調されている。

わずか5.2mの最小回転半径など、「日本専用車」としての立ち位置にこだわり抜いて開発された。後期モデルでは、リアランプまわりの立体感も強調されている。

画像: アスリートには写真のS-Tのほかにより上級なGも設定されていた。ちなみに「Jフロンティア」は、トヨタ店70周年を記念する仕様で、このS-Tのみに設定されていた。

アスリートには写真のS-Tのほかにより上級なGも設定されていた。ちなみに「Jフロンティア」は、トヨタ店70周年を記念する仕様で、このS-Tのみに設定されていた。

個人的には、リアまわりの造形がとくにお気に入り。クーペライクな後継の15代目(S220系)に比べてトランクの存在感がはっきりしているのが特徴。それが、いかにもセダンらしくて潔い。

そしてもうひとつ、14代目が特別だと思えるのは、最後の「アスリート」を設定していたからだ。15代目はさらなるスポーティ性をアピール、いわば全車が「アスリート」の系譜を継いでいた。

昭和生まれにとっては夢の「いつかはクラウン」達成は、ちょっと嬉しい。けれどどちらかと言えば、「アスリート」を手に入れたことのほうが、僕的にはめでたいかもしれない。スマートで刺激的で、端的かつシンプルに特別感あふれるアイコンとして、日本を代表するものだと思える。

「アスリート」ヒストリー。それはいつだって特別だった

クラウンにまつわるアイコンと言えば、まずは「ロイヤルサルーン」があった。5代目(80系)に初めて設定されたグレード名だが、国産車随一の気品と落ち着きをまとった上質な高級車という立ち位置を、まさにロイヤルな感じで「体現」していた。

画像: 11代目に設定されたアスリートは、クラウンのスポーティバージョンという位置づけを明確に継承していた。専用チューニングのサスを持ち、エンジンも280psを発生する1JZ-GTE型2.5LDOHCターボを搭載する。

11代目に設定されたアスリートは、クラウンのスポーティバージョンという位置づけを明確に継承していた。専用チューニングのサスを持ち、エンジンも280psを発生する1JZ-GTE型2.5LDOHCターボを搭載する。

画像: 13代目にもアスリートの名称は継承されているが、写真の2010年マイチェン後モデルの乗り心地は18インチタイヤを履いているとは思えない優しいものになった。2.5LのV6エンジンを搭載。同タイミングでレギュラーガソリン仕様となり、パワースペックは少しダウンしたが燃費は向上した。

13代目にもアスリートの名称は継承されているが、写真の2010年マイチェン後モデルの乗り心地は18インチタイヤを履いているとは思えない優しいものになった。2.5LのV6エンジンを搭載。同タイミングでレギュラーガソリン仕様となり、パワースペックは少しダウンしたが燃費は向上した。

やがて変化が起きた。クラウンマジェスタやセルシオなど、トヨタ流高級車の領域がV8モデルへと広がっていくにつれて、クラウンには新たに、スポーティ路線に沿った差別化が求められたのだ。

アスリートが初登場したのはまさに「いつかは・・・」の7代目(120系)で、特別仕様車として1984年に設定された。ちょっとだけ戦闘的なフロントスポイラーに加え、ゆったりとした乗り心地よりも優れたドライバビリティを追求したサスペンションセッティングで「いつもと違う」感を演出していた。

8代目(130系)では1989年にカタログモデルとして設定、パワートレーンにも特別な仕様が与えられた。2L 直6スーパーチャージャー、3L 直6など、ハイスペック感が際立っていく。背景には、1987年に登場したセドリック/グロリア「グランツーリスモ」の存在もあったかもしれない。

画像: 11代目アスリートVにはVVT‐iにセラミックターボを組み合わせた2491ccの1JZ‐GTE型 直6DOHC(280ps/38.5kgm)を搭載している。

11代目アスリートVにはVVT‐iにセラミックターボを組み合わせた2491ccの1JZ‐GTE型 直6DOHC(280ps/38.5kgm)を搭載している。

9代目、10代目ではお休みしていたものの、1999年登場の11代目では最高出力280psを誇る2.5L直6ターボユニットを搭載した「アスリートV」を再設定。外観でも差別化されながら13代目に至るまで、上級スポーティサルーンの代名詞として成熟されていった。

その極みとも言えるのが、2012年に登場した14代目クラウン アスリートだろう。同じ上質感でも、洗練さを狙ったロイヤルとはまったく異なるアプローチが刺激的だった。ある意味「ゼロクラウン」以来の、インパクトあふれるフルモデルチェンジを遂げていたと思う。

「ザ・日本のセダン」の良さを、改めて見直したい

さて今さら改めて14代目アスリートを見てみると、その巧みなデザイン性に感心させられる。確かに、稲妻が走っているようなフロントグリルの造形など、当時初めて見た時は少々デコレートが過ぎている感があった。けれど、アグレッシブかつシャープなフェイスデザインが一般化している今では、違和感なし。かえって古臭さを感じさせないのは、いい具合に時代を先取っていた、という感じさえする。

画像: マイナーチェンジ時に、全12色のジャパンカラーセレクションパッケージを設定。写真はそのうちの代表として選ばれた5色だ。写真左から仄(ホノカ)、紅(クレナイ)、天空(ソラ)、常盤色(トキワイロ)、胡桃(クルミ)…だと思われる(リリースに明記されていないので、独自に照合)。

マイナーチェンジ時に、全12色のジャパンカラーセレクションパッケージを設定。写真はそのうちの代表として選ばれた5色だ。写真左から仄(ホノカ)、紅(クレナイ)、天空(ソラ)、常盤色(トキワイロ)、胡桃(クルミ)…だと思われる(リリースに明記されていないので、独自に照合)。

挑戦的と言えば、カラーバリエーションの展開でも話題を集めていた記憶がある。「リボーンピンク」(2013年に発売)はさすがにやりすぎだったような気もするけれど、「空色edition」とか「若草色edition」という、国産最上級サルーンにはありえなかった明るく爽やかな特別色は、高級車ながら新たな華やかさを感じさせるものだった。

マイナーチェンジ時には「日本ならではの繊細な色合い」を謳う12色の「ジャパンカラーセレクションパッケージ」を展開し、文字どおり多彩な個性が与えられることになった。もっともこのオプションカラー、街中で見かけることは少ない。空色と若草色はこれまでにそれぞれ一度だけ、実車を見かけたことがある。一方でピンクは今なお時折り見かけるのだから、不思議なものだ。

ちなみに今回仕入れたのは、S210系後期型に設定されていた、特別仕様車「Jフロンティア」。本木目のレイヤーウッドステアリングとウルトラスエード×本革コンビのシートが標準装備されるなど、豪華さではなくスポーティ感を高めた硬派な仕様となる。ボディカラーは、派手すぎないダークレッドマイカメタリック。これもクラウンとしてはちょっと珍しい色かもしれない。

さらにパワートレーンも、少しばかり変化球なものを選んだ。この世代はすでにハイブリッドが主流となっていたけれど、「S-T」は当時、新開発の直4 2Lターボ(8AR-FTS)を搭載する。ダウンサイジングを目的に後期型から投入されたもので、最高出力は235ps、最大トルクは350Nmで、8速AT(8Super ECT)を組み合わせる。

画像: 最大トルクを1650-4400rpmの幅広い回転域で発生させるほか、駆動力統合制御システム(DRAMS)を備えた8 Super ECTを組み合わせることで、アクセル操作に対する瞬時のレスポンスや気持ちの良い加速感を実現した。

最大トルクを1650-4400rpmの幅広い回転域で発生させるほか、駆動力統合制御システム(DRAMS)を備えた8 Super ECTを組み合わせることで、アクセル操作に対する瞬時のレスポンスや気持ちの良い加速感を実現した。

画像: 日本のモノづくりの技術を盛り込んだJフロンティアのインテリア。中でも本木目のレイヤーウッドステアリングは、職人によって仕上られた滑らかな肌触りと優しい風合いが特徴だ。

日本のモノづくりの技術を盛り込んだJフロンティアのインテリア。中でも本木目のレイヤーウッドステアリングは、職人によって仕上られた滑らかな肌触りと優しい風合いが特徴だ。

走行距離は約7万6000kmほど。10年落ちとしてはほどよく走っている。エクステリアはやや退色が見られるものの、目立つ傷もなく状態はいい。年式・走行距離の割にインテリアのヤレが少ないのは、大切にされていた証しだろう。内外装ともにフルノーマルで、安心感も高い。

10年落ちの最後のアスリートは果たして、どんな走りを楽しませてくれるのか。正直、パワースペックは今となってはそうとうおとなしい印象もあるけれど…まずはMotor Magazine 8月号(2026年7月1日発売)でご紹介、その後、Web版「ちょいふるジョイフル」で、さらに詳細をお伝えする予定だ。

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