2011年12月、最高出力550ps/最大トルク680Nmという当時量販ジャガー史上最強のパフォーマンスを誇る「XKR-S」が日本に上陸した。その走りとともにジャガーならではのしなやかで上質な乗り味はどう実現されていたのか。今回は2012年に行われた国内試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年6月号より)

ビッグパワーを持ちながら扱いやすいことが特徴

一方で、そんな駆動力の増減にかかわわらず常に滑らかなステアリングフィールや、自然な4輪のグリップバランス感が演じられるのは、よくできたFRレイアウトの持ち主の典型的テイストという印象でもある。そんな「剛柔自在」なドライビングの感覚が、このモデルならではの大きな特徴でもある。

500psをはるかに超える出力を備えたFRレイアウトと聞くと、そのトラクション能力に不安を抱く人もいるかもしれない。が、こと「ドライの舗装路面上」で乗る限りでは、そんな心配には及ばないと断言できる。

実際、「ライバル他車のトラクションコントロールは、トラクションそのものの改善を狙うが、XKR-Sのそれは、走りの自由度を高めることが目的」と、かつてポルトガルで開催されたXKR-S国際試乗会の場で、担当の開発者から耳にしている。

そんな彼の地でのサーキットランでは、なるほどその自在なハンドリング性能の高さにも舌を巻いた。オンロードでは、多くの人が『ジャガー』というブランドに連想するであろうしなやかで上質な乗り味を演じる一方、こうしたシチュエーションに持ち込んだXKR-Sは、見事なまでに超一級のスーパースポーツカーそのものであったということだ。

そんなホットな走りのスタンスは、昨今のジャガー車ではすべての4ドアモデルにもしっかりと受け継がれている。その象徴が、最近フェイスリフトを受け、XJとの共通イメージが増した顔付きを与えられたXFのトップグレードモデル『XFR』。こちらに搭載されるのも、XKR-S用と基本構造をともにするスーパーチャージャー付きエンジン。最高出力はグンと控えめ(?)の510psだが、それでも怒涛の動力性能を味わわせてくれることは言うまでもない。

そしてこの『XFR』でも、実は日常シーンではしなやかな走り味が印象的だ。それでいながら、ひとたびムチを当てれば世界最高峰の、スーパースポーツサルーンに変身という二面性の持ち主であることが、大きな特徴であり、魅力のポイントなのだ。

そう、これらモデルたちに代表されるように、最新のジャガーモデルというのは、実は高度な走りのダイナミズムがすべてのモデルを串刺しにするかのように縦断しているのだ。知れば知るほど、乗れば乗るほどに、その懐の深い走りの魅力に引き込まれていく。これこそが、新世代ジャガーモデルに共通する魅惑のポイントなのである。(文:河村康彦)

画像: XKらしい上質なインテリアながら、ヘッドレスト一体型のカーボンファイバー調本革パフォーマンスシート採用で、レーシーな雰囲気も漂う。

XKらしい上質なインテリアながら、ヘッドレスト一体型のカーボンファイバー調本革パフォーマンスシート採用で、レーシーな雰囲気も漂う。

ジャガー XKR-S 主要諸元

●全長×全幅×全高:4795×1915×1310mm
●ホイールベース:2750mm 
●車両重量:1810kg
●エンジン:V8DOHC+スーパーチャージャー
●排気量:4999cc
●最高出力:405kW(550ps)/6500rpm 
●最大トルク:680Nm(69.3kgm)/3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格(税込):1750万円(2012年当時) 

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