文: 中村圭吾/写真: 永元秀和
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初めての愛車はEG型シビックフェリオだった

こちらはナカムラの初めての愛車、ホンダ シビック フェリオ VTi(約20年前の写真、ギリデジタルだった)。18歳で運転免許取得後は、このシビックを相棒にしてひたすら走り回り、運転の楽しさを教わった。
シビックという車名を聞いて、何を思い浮かべるだろうか。「RS」「ワンダーシビック」「スポーツシビック」「タイプR」「VTEC」・・・。世代によって、その答えはきっと違う。ギリ昭和生まれの自分にとっては、「スポーツシビック」と呼ばれた5代目シビック、つまりEG型がまさにドンピシャだ。そして何を隠そう、初めて買ったクルマでもある。
いまから20年以上前の話だが、当時はスポーツモデルSiRのMTを探していた。ところが、たまたま自宅近くの中古車販売店で出会ったのは、ワインレッドのシビックフェリオ VTi。しかも純正オプションのLSD付きという、今考えるとなかなか珍しい個体だった。
ATだったにもかかわらず、迷うことなく購入した。その時まだ15歳だった(もちろん親名義)。そこから免許取得までの3年間はどうしていたかというと、両親の運転するシビックの助手席に座り、その走りをひたすら味わっていた。そんなおかしな15歳がどれだけいたのかは知らない。
そして念願の運転免許を取得すると、わずか3カ月で1万km以上走った。初めての愛車に浮かれていたのはもちろんだが、高回転まで気持ちよく吹け上がるVTECエンジン、そして四輪ダブルウイッシュボーンによる軽快な身のこなしに夢中になった。目的地なんて必要なくて、ただただ走り回った。
何が言いたいのかといえば、シビックというクルマには並々ならぬ思い入れがあるということ。したがって多少どころか、かなり贔屓目の評価になる可能性はある(と最初に言っておきます)。それでもシビックやホンダのスポーツに興味がある人ならば、ぜひ最後まで付き合っていただきたい。

こちらは初代シビックのRS。ホンダコレクションホールに動態保存されている車両を表紙用に撮影させていただいた。長距離ドライブにも適したスポーティモデルとして登場。RSは「Road Sailing(なだらかに道路を帆走するの略)」。CVツインキャブや5速MT、ワイドなラジアルタイヤなどが装着されていた。
シビックは1972年に登場して以来、50年以上にわたって続くホンダを代表する車名のひとつ。当初車名に込められた「市民の」という意味を考えると、SUVやクロスオーバーといったモデルが市場の中心となったいま、全高1410mmの5ドアハッチバックである現行型シビックは、ずいぶんマイノリティな存在になったようにも思える。
しかし、そんな心配はいらない。なぜならば現行型シビックは若いユーザーからの支持も高いというから。2024年9月にはMT専用の「RS」グレードを追加。そして2026年6月のマイナーチェンジではe:HEVにもRSが設定され、プレリュードでも話題となった「Honda S+ Shift」が組み合わされた。
e:HEV RSが教えてくれた新しいスポーツ

こちらは現行シビック e:HEV RS。先にMT専用モデルとしてRSグレードが登場していたが、遅れてe:HEVにもRSが追加された。ターボエンジン×MTのRSと電動モデルのe:HEV RS。どちらも運転する楽しさが溢れている。
現行シビックには以前、各モデルを長期間試乗させてもらった経験がある。1.5Lターボ+CVT、1.5Lターボ+MT、e:HEV(今回RSが追加された)、そしてタイプRまで含めれば、実に多彩だ。しかも面白いのは、それぞれがまったく同じ方向を向いているわけではないのに、どのモデルにもちゃんと「運転する楽しさ」があるということだ。
素のシビックも、スポーツモデルも、走って楽しい。これこそがシビックのすごさだと思っている。
e:HEV RSそのものは以前、クローズドコースで試乗済み。その時にも爽快な走りは確認していたが、街中、高速道路、そしてワインディングロードという日常的な環境で使ってみたら、どんな表情を見せるのか。今回はそこが最大の興味だった。
走り始めてまず気づくのがハンドルの感触だ。プレリュードと同じDシェイプ形状なのもそうだが、従来のe:HEVより明らかに手応えが重い。EPSの専用チューニングに加え、トーションバーの剛性も高められているという。切り始めから反応が明確で、ドライバーの入力に対してクルマが素早く応える。
パワートレーンとしてのe:HEVの魅力は、モーター駆動を主体とした滑らかな走りにある。そこへe:HEV RSでは、Honda S+ Shiftによる楽しみが加わった、というのが大きなポイントだろう。
これが実に面白い。基本的にモーターで走るe:HEVだが、Honda S+ ShiftをONにすれば、アクセルペダル操作に合わせたエンジン回転の上下に対して、あたかも有段トランスミッションを介して走っているかのような感覚を作り出す。
しかも「それっぽい演出」ではない。加減速Gとエンジン回転、サウンド、アクセル操作がきちんと同期しているから、違和感が少ない。そこへアクティブサウンドコントロールが加わり、高回転型のホンダエンジンを思わせる乾いたサウンドが室内に響く。

かつては3ドアハッチバックやセダン、クーペ、さらにはワゴンタイプのシャトルまで、多彩なボディを展開していたシビック。現行型の日本仕様は、5ドアハッチバックのみとなっている。
もちろんこれらは擬似的なもので、昔の高回転VTECエンジンとは仕組みも音もまったく違う。それでも右足を踏み込みたくなる感覚は、どこか懐かしい。パドルを使えば8段の仮想変速も楽しめる。
ワインディングロードでコーナーが近づき、ブレーキングしながら3速、2速と落としていく。パドルを引くたびに回転が跳ね上がり、小気味よいブリッピング音が響く。
そこへ先ほどのステアリングフィールが加わる。次のコーナーが楽しみで仕方なくなる。ハイブリッドモデルでもこんな気分にさせてくる。それこそがHonda S+ Shiftの狙いなのだろう。
もちろん、足まわりにも手が入っている。サスペンションはダンパー径を拡大し、内部バルブを最適化。さらにスプリングやスタビライザー、ブッシュ類にも専用セッティングが施されている。ただし、MTのRSとまったく同じ味付けなわけではない。
Honda S+ Shiftが変えたハイブリッドの楽しさ

e:HEV RSも、ワインディングロードが楽しい。プレリュードと同じHonda S+ Shiftを採用しながらも、シビック独自の味付けにより、ひときわスポーティな走りを楽しませてくれる。
MT仕様ほど路面からの情報を直接的に伝えてこない一方で、プレリュードと比べれば明確に引き締まっていることを感じる。プレリュードのスポーツモードよりも硬質に感じる場面すらあった。ターボ+MTとe:HEVではキャラクターが異なるため、シャシの方向性も変えているという。
e:HEV RSはスポーティでありながら、より幅広いユーザーが日常的に乗れるところを狙ったということなのだろう。それでも、シビックらしいシャシの素性の良さははっきり伝わってくる。
とくに印象的なのがリアタイヤの追従性だ。コーナーへ入ってフロントを向けると、リアが遅れることなく自然についてくる。荷重をかけても接地感が薄れず、4輪がきちんと路面をつかんでいる感覚がある。FFのタイプRでニュルブルクリンク最速を争ってきたメーカーだけに、そのベースとなるシビックそのもののポテンシャルもやはり高い。
速いというより、曲がることが気持ちいい。ここが大事な気がする。今回シビックに投入されたHonda S+ Shiftは、今後さらに適用車種を拡大していくという話もある。つまりこれは一部のスポーツモデルだけの飛び道具ではないのだ。電動化が進んでも「操る喜び」を残し、それをホンダというブランドの価値にしていくための技術なのだと思う。
シビックは今も「走る歓び」を伝えてくれる
20年以上前、EGシビックで「クルマを操ることってこんなに楽しいんだ」と知った。あの頃の高回転型自然吸気VTECは、もう過去のものになってしまった。だからといってホンダのスポーツが終わったわけではない。基本モーター駆動のe:HEVに、Honda S+ Shiftという新しい技術を組み合わせ、いまの時代なりの方法で右足、そして耳と身体で楽しませてくれる。
昔のシビックと同じではないし、同じである必要もない。ただ、走り終えたあとに、またハンドルを握りたくなる。あの頃、目的もなくシビックで走り回っていた自分と、結局いまもやっていることはあまり変わっていなかった。
シビックは時代とともに大きく変わったけれど、ハンドルを握るたび「走るのって楽しいよね」とドライバーに語りかけてくるところは、今も変わっていないようだ。

おかげさまでモーターマガジン2026年10月号「Hondaのスポーツ」特集は大好評でした。この連載では本誌の裏側や印象的だった出来事など気ままに更新していく予定です。モーターマガジン誌を読んでくれた方、ご意見ご要望もメールやSNSでどしどしお伝えください。





