LCの組み立てラインは、トヨタ初の乗用車量産工場として1959年に立ち上がった元町工場の一角にあった。いわゆる混流生産ではなく、完全にLCのために独立した建屋が用意されている。日産わずか48台という少量生産のクルマにしては贅沢な「工房」だ。建物の外観こそ、それなりの歴史を感じさせるが、中に入るとその印象は一変する。フロアも壁も真っ白で、天井からの採光も広く取られている。とにかく明るく、清潔感にあふれている。
まず、アッセンブリーラインの様子が今まで見てきた製造ラインとは大きく異なる。クルマの生産工場と言えば、ベルトコンベヤーに乗って、作業員が手際よく次から次へとバトンを渡すように部品を取り付けていくのがふつうだ。ところがLCの組み立てラインでは、ひとりの作業員が1台あたり20分もかけて、複数の作業をこなしていく。量産車ではひとり当たりの作業時間は1台あたり1分間だというから、その違いは歴然だ。だからと言って楽をしているわけではない。作業時間20倍ということは、覚える作業も20倍ということでもある。現在、このLCのラインには179名の作業員が働いているが、全員、研修を受講している。また各作業は、タブレットを活用して確認が行われる。さらに、各工程には「匠」と呼ばれる熟練スタッフが目を光らせている。従来の工法にとらわれない作り込みが行われていた。
完成したLCはアッセンブリーラインに隣接した検査ラインで、静的な品質確認が行われる。厚いガラスで囲われた検査ラインでは、上方向、左右方向からはもちろん、床下からも照明が当てられており、わずかな歪みや傷さえ見逃されることはない。またドアの開閉を初めパワーアシストの作動音などもチェックされており、LCにふさわしいクオリティのチェックが念入りに行われていた。
「製品でなく作品として作り込む」。関係者のこのひと言に、この新しいアッセンブリーラインを考案した意図がわかる。クルマ作りが変わっていく…LCから始まった新世代レクサスのクルマづくりは、工業製品の枠を超え、新たな価値を生み出そうとする創造力に満ちあふれていた。