A5シリーズとして第2世代目
アウディA5シリーズは、「アウディ」というブランドを象徴するようなクルマだ。
先代となる初代A5クーペは、2007年3月のジュネーブショーで登場、エレガンスでスポーティな美しいスタイリングは、その知的な印象や、4シータークーペとしての実用性、そしてその高品質感から、世界中で大ヒット。2年後にはカブリオレとスポーツバックも登場。新しいユーザーを掴むことに成功した。
今回日本に上陸した2世代目は、クーペ/スポーツバック/カブリオレが同時にフルモデルチェンジを行っている。
いちばんのニュースは、先代ではA5販売のうちの50%以上を占めた「ボリュームゾーン」であるA5スポーツバックにFFモデルが登場したことだろう。価格も546万円から用意される。
スポーツモデル「S5」の実力は?
今回試乗したクルマは、もっともスポーティな「S5」のクーペ。1980年代を代表する「アウディクワトロ」の流れを21世紀に引き継いでいる1台だ。
搭載されるエンジンは、CWG型3LのTFSI(ターボエンジン)。最高出力354ps、最大トルクは500Nmを発生。アウディお得意のクワトロ(フルタイム4WDシステム)で、あり余るパワーを4輪で路面に伝える。
S5はスポーツモデル。だが乗り心地が良い。
スポーツモデルと聞くと、がちがちの硬い乗り心地を想像してしまいがちだが、それはもう昔の話。ダンピングコントロール機能付きSサスペンションを採用するS5は、質の高いしなやかさを与えてくれる。
アウディドライブセレクトをどんなモードにしても、これならば後席に座る人から文句が出ることもないだろう。19インチ35扁平という薄いタイヤを履いているとはどうしても思えない、上質な大人の乗り味だ。
組み合わされるトランスミッションは8速ティプトロニック(AT)。いわゆる「トルコンAT」だが直結感もあるし、変速に節度があり、「S5クーペ」という立ち位置には相応しいと思う。
密度の濃い速度感。
2009年にS5クーペが登場したとき、搭載されたエンジンは354ps/440Nmを発生する4.2LのV8自然吸気エンジンだった。それが2014モデルでは333ps/440Nmを発生する3LのV6+スーパーチャージャーにチェンジ。
そして今回は354ps/500Nmの3L・V6ターボ。「日本の公道じゃ、そんなスペックいらないじゃん」と思うのも、わかる。そうなのだが、それでも日本の道でもこの余裕は楽しめる。
じつを言うと、4.2L・V8自然吸気から3L・V6スーパーチャージャーに変わったとき、パワーが減ったとかそういう意味ではなく、加速するときの盛り上がりに「密度感が薄くなった」感覚があった。いや、速い遅いの問題でもない。たぶん過給器つき3Lエンジンの方が軽いので、実質は速いと思う。
エココンシャスなこの時代、多気筒の大排気量自然吸気モデルは、一般的にイコール「悪」のようなイメージに世間一般には捉えられがちだが、じつは大排気量NAだからこそ味わえる、密度の濃さ、ってのがある。
今回、新しくなったS5クーペに乗ってみると、パワー/トルクがアップしたことよりも、むしろその4.2L自然吸気モデルのときに感じた“密度の濃い速度感”が復活していることに感心した。
運転していて、豊かな気持ちになる感覚。いつまでもハンドルを握っていたくなる感覚。そういう大人のスポーツ感、このS5は持っている。
アウディS5クーペ 主要諸元
●サイズ=4705×1845×1365mm●ホイールベース=2765mm●車両重量=1680kg●エンジン=V6DOHCターボ・2994cc●最高出力=354ps/5400-6400rpm●最大トルク=500Nm/1370-4500rpm ●トランスミッション:8速AT ●JC08モード燃費:12.7km/L ●タイヤサイズ:255/35R19 ●車両価格=913万円