文:大谷達也/写真:フォルクスワーゲン グループ ジャパン
派手な外観の変更はないが中味が確実に進化している
この結果、コーナリング中にスロットルを急激に抜くとタックインが起こり、軽いオーバーステアに持ち込めるようになった……わけでは決してない。その意味ではフォルクスワーゲンの原則は保たれているのだが、それでもドライバーの操作にクルマが反応してくれることでこれまで感じられた閉塞感が和らぎ、ハンドルを通じての対話が深まったように思う。小さな変化ではあるが、個人的にはこれでゴルフRの印象が一新されたといっていい。
もうひとつ、感心されたのがブレーキ。ゴルフRを試乗したサーキットはハードブレーキングを多用するコースレイアウトだったが、連続周回をこなしてもブレーキペダルのフィーリングはほとんど変わらなかった。しかも、高価なコンポジットブレーキではなく、より一般的なスチールブレーキでこれを達成している点がフォルクスワーゲンらしくて感心させられた。
聞けば、ローター部分はスチール製でもハブ部分をアルミ製にすることで放熱性を高め、サーキット走行時の耐久性を向上したという。このパフォーマンスブレーキは、ドイツ本国では前述のパフォーマンスパッケージの一部としてオプション設定される。
なお、同じ試乗会で味見したゴルフGTIパフォーマンスもゴルフR同様の感触だ。残念ながらGTIパフォーマンスは日本に導入されない予定というが、サスペンション設定はGTIも共通とのことなので、日本仕様のGTIもよりしなやかな足まわりに生まれ変わるだろう。
今回のマイナーチェンジは、前後のフェイスリフトを含めて強くひと目を引くものではなく、その意味では地味な変更といえる。そのいっぽうで、ゴルフRやゴルフGTIのサスペンションが見直されたり、レーンキープアシストが設定されるなど、見逃せない改良点も少なくない。Cセグメントのベンチマークは、またもそのハードルをみずから引き上げたといってよさそうだ。