GRMN/GR/GRスポーツの違いは?
トヨタGAZOO Racingカンパニーで開発、生産されるスポーツカーの新ブランド「GR」。これまでのスポーツコンバージョン車シリーズは「G Sports(通称G's=ジーズ)」だったが、今後はトヨタのレース活動を統括することになったGAZOO Racingの頭文字をとった「GR」に一新して、トヨタの走りのイメージを牽引していく。
モデル体系は、従来同様にエンジンまで含めてフルに手を加えたコンプリートモデルの「GRMN」を頂点に、シャシや駆動系、内外装に手が加えられた「GR」と、型式認定を受けたスポーツエントリーモデルの「GRスポーツ」をラインアップ。また、カスタマイズを手軽に他しめるアフターパーツの「GRパーツ」を設定する。
2017年9月19日からGRシリーズの第1弾として、ヴィッツの「GR」と「GRスポーツ」、プリウスPHV、ハリアー、マークX、ヴォクシー、ノアの「GRスポーツ」を発売。さらに今後、ヴィッツに「GRMN」(2018年春)、86に「GR」、アクアとプリウスαに「GRスポーツ」(2017年末)を追加予定だ。
頂点の「GRMN」は 専用エンジンが刺激的
まず、GRの本気度をもっとも象徴しているのがヴィッツGRMNだ。従来型同様にスポーツモデルの頂点として位置づけられるGRMNは、大きなウイングやパワーユニットの大幅改良などが基本だったが、今回は欧州の3ドアモデルをベースに、エンジンは1.8Lスーパーチャージャー(S/C)を搭載する。
さらにGRMNならではのボディワークが行われたことで、一層の剛性アップが施され、まさに本場仕込みのホットハッチモデルとなっている。1140㎏の車重と212㎰ を絞り出すパワーユニットとの組み合わせは、WRCで活躍するヤリスにさえイメージが重なるほどで、ポテンシャルの高さは容易に想像がつく。
このヴィッツGRMN(今回の車両はプロトタイプ)の走りは、今までのトヨタ車のイメージとはまるで別次元! コンパクトなボディながら、S/Cで過給された力強さは、どの回転域からでもシュパッと瞬時に加速力を生み、コーナーでの旋回Gは一気に高まる。そんな時にもまるで何ごともなかったかのようにグッと加速体勢に移れる無駄のなさは、強固なボディである証だ。
ボディに無駄な動きがないからパワーは即座に路面へ伝達され、路面を強く蹴りだしてくれる。もっともその強靭なボディでさえ、サーキットでの高いGではリアがムズムズと動く印象があった。ボディを可能な限り強化しザックスのダンパーによって接地性を高めたシャシ性能に、一日走り込んだタイヤが悲鳴を上げてしまったのだろう。
右ハンドルながらウインカーレバーが左という輸入車同様の操作フィールやMTによる走りのポテンシャルによって、イメージはヨーロッパのコンパクトスポーツそのもの。GRブランドを引っ張り、トヨタの走りへのこだわりを伝えるためにも、存在意義は大きく大事な一台だ。
GR/GRスポーツはチューン度合いで差別化を図る
次にヴィッツGRは10㎜ローダウンされた専用サスに加えて、ボディ補強が徹底されたもののいつも見慣れた5ドアHBモデルがベース。それでもGRMN同様に専用エアロなどで整えられた外観フォルムは精悍さの中にひとクラス上の質感の高さが感じられる。
乗り味も同様でスッと沈み込んでいく動きのスムーズさは走りの良さはもちろんのこと、快適性もアップしている印象だ。ボディへの無駄な入力が少なくて静かにさえ感じる。CVTはラリーの実戦で鍛え上げられたというだけのことはあり、Dレンジでの走行でもエンジン回転を高回転域で維持してくれる。減速時にパワーバンドから外れることなく段階的にシフトダウンしてくれるのは、サーキット
はもちろん、ワインディングでは大きな武器になるだろう。
エントリースポーツとなるヴィッツGRスポーツは、これまでの「RS」に代わるグレードで、基本的にGR同様に無駄な動きが少なくて扱いやすい。ザックスを使っていたGRほどではないが、ジワッと穏やかに動き始めてくれるのは挙動がつかみやすくてありがたい。ノーマルで感じられた底つき感やボディの振られ感などがなくなり、スッキリとした動きが魅力だ。
GRもGRスポーツもサスをしっかり使いこなし、無駄な動きを排する狙いは共通。この目指した方向が同じで、そこにそれぞれのキャラに従って性能差を高めていく味付けこそがGRの一貫したクルマつくりへのこだわり。GRになって走りのコンセプトがビシッと決まり、ぶれない柱がしっかり見えてきた。
■文:瀬在仁志 ■写真:小平 寛