レクサスLFAで4輪復帰。技術者集団ヤマハの高い開発能力が求められた
1980年代中盤以降、車両やエンジンの内製化を進めるトヨタの方針により、車両開発、あるいはエンジン開発でヤマハの介在する機会は失われていた。しかし、2000年代に入るとトヨタのレクサスブランドプロジェクトが本格化。すると、再びヤマハ登板の機会が巡ってきた。
レクサスは特定少数、付加価値の高いブランドとして創設されたが、そのイメージリーダーにふさわしい最高性能と最高品質を備えたスポーツモデルの企画が検討されていたのだ。それがLFAで、時代背景、周辺事情は異なるが、成長期にあったかつてのトヨタにおける2000GTと同種、同質の意味を持つ車両である。
自動車工学が長足の進歩を遂げ、300km/h超のスピード領域も難なく実現できる時代を迎え、具体的な数字で最高の性能や質を定義付けることは難しくなったが、そうした中であえてレクサスを象徴するモデルを作りたい、という話である。
車両を構成するすべての要素が徹底的に解析され、それぞれが最高の性能、あるいは最適化された状態で機能することを基本条件とした上で、動力性能の核を担うエンジン開発を、ヤマハに任せたわけである。
搭載エンジンがV10になったこと、ターボでなくNA、4.8Lの排気量が選ばれ1LR-GUE型になったことなど、すべてに論拠のある話だが、加えて音の領域にまで要求性能が及んだことが興味深い。最上級のスポーツカーとして、人間の感性に訴える「音作り」が求められたのだ。
数値化できないこうした項目は、もっとも達成が難しい。グループ企業に第一級の音響メーカーであり楽器メーカーを擁するヤマハならではの要求性能で、うがって見れば、この領域がトヨタにない資質だったのかもしれない。
現在のヤマハには、こうした開発能力のほか、量産エンジン生産の能力も求められている。内燃機関として最高レベルの環境性能と動力性能を備えた2L直噴ターボの8AR-FTS型エンジンは、その代表的な例と言えるだろう。まさに二人三脚、復活した技術集団ヤマハとトヨタのパートナーシップだ。
解説:大内明彦
みんなの知ってるYAMAHAのお仕事“TMAX”【コラム】
ビッグスクーターブームと言える時代にヤマハが投入したのがXP500TMAXだ。スポーツコミューターの進化をコンセプトとし、外見だけでなく走りを一層進化させることで、本格的なスポーツ走行をこなせるマシンとして評価された。
文:飯嶋洋治