(ホリデーオート 2018年11月号より)
排気量を2→2.4Lへアップ。加速性だけでなく静粛性も向上
アウトランダーPHEVの2019年モデルがデビューした。ダイナミックシールドと呼ばれる精悍な顔つきは、LEDライトの採用やラジエターグリルの変更、前後バンパーエクステンションの追加などによって、三菱の代表モデルらしい風格も漂わせてくれている。
もっとも今回のポイントはここではない。基本性能が大きく大胆に変更されたのだ。
まず、エンジンが従来の2Lから2.4Lへとサイズアップ。ダウンサイジングの時代からすると逆行しているように思えるが、エンジンにゆとりを持たせることで、低回転で効率良く発電できることと、モーターをサポートする時のパワーにゆとりが出て、EVとしての機能が一層強化されるという。
この大胆な決断こそ、三菱の力技であり魅力。元気な三菱が戻ってきた象徴ともいえる。
実際に乗ってみると、モーターで走っている時に発電モードとなった場合のエンジン音が確実に静かになっているし、振動も少ない。エンジンが加速のサポートに入った時も低回転からググっと押し出してきてくれることから、パワーに段付き感がなくスムーズで力強い。
もちろんさらに踏んで行けばエンジンが主役となって高速加速もいい。2.4Lへのスケールアップは大正解だと思う。カタログ上の燃費表示はわずかに下がっているものの、エンジンが低速で回っていることが多いから、実燃費は大差ないか、むしろ向上している可能性もある。
なぜなら、今回もうひとつ目玉がある。PHEVの構成部品のうち、約9割のコンポーネントを改良し、駆動用バッテリーを12.0→13.8kWhへ容量アップし、出力を10%向上。リアモーターの出力も12%向上させることで、EV走行の航続距離が60.2kmから65kmへ伸びているのだ。
もちろん前後のモーター駆動力とブレーキ制御を組み合わせることで、ランエボで磨いたS-AWC技術を進化させ、曲がる4WDモデルとしての走りも強化。モーターに余裕があることから、一般的なワインディングでは滑らかなEV加速と旋回力が相まって、SUVの大きさを感じさせないハンドリング性能を実現している。
中でも標準サスはボディ強化に加え、前後とも容量アップや補強が行われたことで接地性がアップ。
ステアフィールもセンター付近に締まりが出た上に、ギア比の変更でステアリングをもうひと切りすることが少なく、一体感ある走りが楽しめた。
変更を受けたメーターも、エンジンとモーターの働きがパワー表示としてひと目でわかり、エンジンをかけない走りを視覚的に楽しめたり、静かになったエンジンの作動確認が容易にでき、結果として燃費走行にも効果的だ。
さらにS-AWCにはSNOWモードやSPORTモードが追加され、駆動力コントロールのみならず、パワーフィールの変化を幅広く選ぶことができるようになった。まさにランエボの気持ちの良いハンドリングを思い起こさせてくれた。
見た目は大きく見えるものの、中身は確実にランエボやパジェロ時代に走り込んできた三菱の技術力が濃縮されていた。そこに次世代のパワートレーンに迷いなく切り込んでいくことで、先進的な走りと環境性能を両立。三菱の復活を象徴するかのようなポテンシャルにホッとした。
(文:瀬在仁志 写真:井上雅行)
アウトランダーPHEV Sエディション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4695×1800×1710mm
●ホイールベース:2670mm
●重量:1920kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:2359cc
●エンジン・モーター最高出力:128ps・60ps+70ps
●エンジン・モーター最大トルク:199Nm・137Nm+195Nm
●JC08モード燃費:18.6km/L
●トランスミッション:電気式無段変速
●タイヤサイズ:225/50R18
●価格:509万40円(税込み)