輸入車は、最初に日本へ導入されてからも、そのライフサイクルの中で改良が加えられることが多い。モデルイヤーで乗り心地が変わるのは当然だし、極端なことを言えば、生産月で変わったりするので、一度試乗しただけではその進化を見逃すことになる。
目に見える改良はすぐわかるし、プレスリリースが出るのもわかりやすい。安全装備関連の改良もそうだ。しかし目に見えない部分の進化は乗ってみないとわからないのだ。
アウディ A7は、2018年9月に日本へ導入されている。それから1年も経過していないが、新しい試乗車が用意されたので、その進化ぶりを確認すべくさっそく試乗した。ただし、デビューからそれほど時間が経過していないので、「大きくは変わっていないだろう」、とは思っていたのだが、その予想は見事に裏切られた。
まず走り初めて驚かされのは静粛性の向上だ。助手席に座っている人の寝息さえも聞こえてきそうなほど静かな室内である。乗り心地もいい。荒れた路面からの衝撃をまるで何事もなかったかのように吸収してくれ、乗員に伝えてくるのは居心地の良さばかりである。
ストレスなくスムーズに回るエンジンも好印象だ。運転中は、余計なものが一切排除され必要な情報だけが伝わってくる。「とてもいいものに乗っている」と感じられるクルマだ。
マイルドハイブリッドシステムが搭載され、ベルト駆動式オルタネータースターターとリチウムイオンバッテリーにより減速時にエネルギー回生する。また走行時は55 ~160km/hでコースティングし燃費の向上にも貢献している。
実際に走行中もアクセルペダルを緩めてメーターを見るとコースティング中であることがわかる。逆に、そうでもしないかぎりそれには気づかないほど実にスムーズで自然なのである。
A7は、全長4975mm、ホイールベース2925mmと大柄だがそれを感じさせないクルマとの一体感がある。それを強く意識するのはダイナミックオールホイールステアリングである。「ここは切り返さないと曲がれない」、と思うような場所でも難なく曲がってしまう。
まるでひとクラス下のセグメントのクルマに乗っているようだ。そこで調べてみたら最小回転半径はなんと5.2mとなっている。どおりで小回りが効くはずだ。(文 千葉知充・Motor Magazine編集長/写真:村西一海)
■アウディ A7 スポーツバック55 TFSI クワトロ Sライン
全長×全幅×全高:4975×1910×1405mm、ホイールベース:2925mm、車両重量:1900kg、パワートレーン:V6DOHCターボ、総排気量:2994cc、最高出力:250kW(340ps)/5200-6400rpm、最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1370-4500rpm、トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)、駆動方式:4WD、燃料・タンク容量:プレミアム・73L、JC08モード燃費:12.3km/L、車両価格:1066万円