ターボとスーパーチャージャーを組み合わせたツインチャージャーを採用するモデルは、1980年代の日産、2000年代のフォルクスワーゲン、2010年代のボルボと何度も登場している。効率的な組み合わせと考えられるが、いまひとつ広がりを見せていない。なぜなのか、モータージャーナリストの片岡英明氏に聞いた。(タイトル写真は日産 マーチ Rやマーチ スーパーターボに搭載されたMA09ERTエンジン)

エンジンの低回転域と高回転域で担当する過給機を切り替える

高度1万メートルを超える高空では酸素が薄くなる。だから燃料を燃やしやすくするためにコンプレッサー(圧縮機)で空気を圧縮し、一気に送り込む。この過給機を使えば、同じエンジンでもパワーとトルクをより多く絞り出すことが可能だ。過給機は航空機で使われて発展し、1970年代後半からは自動車にも装着されるようになった。

過給機は、大きく分けるとターボチャージャー(以下、ターボ)とスーパーチャージャーのふたつだ。ターボは排出ガスのエネルギーをタービン(羽根)にあて、コンプレッサーの動力にする。これに対しエンジンのクランクシャフトの回転を使ってコンプレッサーの動力にするのがスーパーチャージャーだ。

より高効率なターボが多くのクルマに採用されているが、低回転域でのスムーズな過給を苦手とする。加速したときにアクセルを踏み込んでもすぐに過給せず、一瞬のタイムラグを生じる。これが「ターボラグ」と呼ばれる弱点だ。

エンジン回転が低いところからスムーズな過給を行ってくれるのがスーパーチャージャーである。そこで考えられたのが、両方の過給機を使い、全域にわたって安定した過給を行うツインチャージャーの手法だ。低回転から高回転まで、力強くダイレクトな加速を楽しめる。

1980年代、日産がツインチャージャーをマーチに採用。21世紀になるとフォルクスワーゲンが、排気量1.4Lのダウンサイジングエンジンにこれを組み合わせ、2Lクラスを凌ぐ性能を手に入れている。また、ボルボも近年ツインチャージャー搭載車を送り出した。しかも、過給機だけでなくモーターを組み合わせたハイブリッド車(PHEV)も設定する。

画像: ターボとスーパーチャージャーを組み合わせたMA09ERTを搭載する日産 マーチ スーパーターボ(K10)。

ターボとスーパーチャージャーを組み合わせたMA09ERTを搭載する日産 マーチ スーパーターボ(K10)。

ドライバビリティが良いだけでなく、燃料をセーブする省エネテクニックとしてツインチャージャーは魅力的なのだ。が、最近は広がりを見せていない。その理由は、両方のシステムをボンネット内に収めるためにはそれなりの空間が必要だし、インタークーラーやオイルなどの配管も複雑になるからである。また、熱対策も大変だ。

理由はそれだけでない。より多くの部品を積むためクルマが重くなるだけでなく、生産コストもかさむ。車両重量が重くなると燃費は悪くなる。デメリットのひとつだったターボラグは、技術の進歩によって気にならなくなった。こうしたことが、今もツインチャージャーが少数派になっている理由のひとつだ。

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