2001年にデビューした4代目ポロは、2005年に大幅なフェイスリフトを受けている。この時、それまでの丸目のファニーな表情を一新して、ゴルフやパサートに近い、当時フォルクスワーゲンが好んでいたワッペングリルとなった。また、メカニズム的には大きな変化はないが、新しいディーゼルエンジンの投入のほか、細部の熟成が進められていた。この後期型は日本でも人気を集めることになったが、登場当時はどのように見られていたのか。当時の記事を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年6月号より)

新しいフォルクスワーゲンの顔を採用

日本でもエントリーインポートカーとして根強い人気を持つポロは、初代の登場が今からちょうど30年前と、フォルクスワーゲンの中でもゴルフやパサートと同じように長い歴史を持っている。

現行のポロは2001年秋に登場したもので、すでに4年近く経過しており、人間で言えば50代に突入したとでも言うレベルだろうか、そろそろリフレッシュ(?)が必要になる年齢に達しているといえそうだ。

さらに、ルポよりも大きく、サイズ的に近いフォックスが登場したことによって、これとの差別化も要求されるようになった。そこでフォルクスワーゲンはポロに外科的手術を施したわけだ。

今回、フォルクスワーゲンがポロに与えた大きな特徴は、パサートに続く新しいフォルクスワーゲンの顔である。それはワッペングリルと呼ばれる逆台形を形成するグリルと、その両脇にレイアウトされた異型ヘッドライトユニットによって形作られている。このフロントの造形上の問題で、全長は19mm前方に伸びている。

さらにこのフロントのデザインモチーフは、リアエンドにまで続き、ハッチバックのウインドウ下部は、中央が折れ曲がったV字型を形成している。さらにリアライトユニットも、これまでと造形は変わらないが、クリアガラスの奥にはフェートンからトゥーランへと採用されてきたLED(発光ダイオード)使用の丸型集合ライトがあしらわれている。

さらにドアミラーには、ゴルフと同じようにウインカーランプがインテグレートされている。こうした外観上の細やかな変更は、たしかに視覚的にポロをワンランク上のクラスに押し上げることに成功している。

ところで、ワッペングリルに見られるような、こうした各モデルにおけるデザイン上の均一化について、フォルクスワーゲンのデザイナーは、「確かにベースデザインには近似性を持たせていますが、たとえば台形グリルに関してはパサートでは周囲のメッキを用いるなどして、クラスに応じたものになるように配慮はしています」と答えている。

一方、インテリアはほとんど変わっていない。試乗モデルにはこれまでになかった4本スポークのスポーツステアリングホイールも用意されていたがこれはオプションだ。ドイツ市場においては、これまで通り搭載装備品によって、トレンドライン、コンフォートライン、そしてスポーツラインの3種類が選択できる。

すべてのポロに新しく標準装備化されたものとしては、フロントとサイド左右のエアバッグ、フロント左右のパワーウインドウ、セントラルロック、ブレーキアシスタントがある。そしてエアコンはコンフォートライン以上に標準で装備されるが、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)は、100ps以上のモデル以外では相変わらずオプションである。

またこのフェイスリフトを機会に、これまで上級モデルにしか用意されていなかったパーキングアシストや、タイヤプレッシャーコントロールなどが、オプションで装備できるようになった。とくにパーキングアシストは、狭い駐車場の多い日本などではありがたい装備だろう。

画像: コンビネーションランプ内の丸形LEDが印象的。リアデザインの新しいアイデンティティとなっている。

コンビネーションランプ内の丸形LEDが印象的。リアデザインの新しいアイデンティティとなっている。

ニューディーゼル搭載、サスペンションはしなやかになった

ヨーロッパには「新しい皮袋には新しい酒をいれよ!」という諺があるが、このニューポロには新しいエンジンバリエーションが用意されている。それはドイツを始めとする西ヨーロッパでは重要なディーゼルエンジンで、これまでの1.4L TDI(75ps)と1.9L SDI(64ps)に代わって、1.5L TDIが2種類のチューン(70psと80ps)で搭載される。これらのエンジンと組み合わされるトランスミッションは、基本的には5速マニュアルだが、130psの1.9L TDIだけは、6速マニュアルが標準装着となっている。

ガソリン仕様は基本的には変化がないが、1.4Lには初めて4速オートマチックトランスミッションがオプションで装着できるようになった。おそらくこれは、日本仕様をドイツにも還元したということだろう。

フォルクスワーゲンの発表したスペックには掲載されていないが、サスペンションはわずかに改良されたようで、路面の凸凹を吸収するときにビシッと一回で落ち着くようなハードでしっかりしたフィーリングが与えられている。同時にエルゴノミックな形状のステアリングホイールでの切り始めがシャープで、現行モデルよりもノーズの動きがキビキビしている。しかも乗り心地や高速直進性などは少しも犠牲になっていない。このスポーティな変化は喜ばしいものである。

短時間の試乗ではあったが、フォルクスワーゲンが各パートにきめ細かく対応したフェイスリフトであったことが確認できた。そして、ニューポロは若返ると同時に、プレミアム・サブコンパクトとしてワンランク上昇していると感じられた。

ドイツ市場においてフォルクスワーゲンは、このグレードアップされたポロの価格を基本的に据え置きにして、2005年3月14日から発売を開始している。すなわちエントリーモデルである1.2L 55psバージョン(日本未導入)は1万1250ユーロ(約150万円)にとどまっている。

果たして、この価格ポリシーが日本向けのモデルに反映されるかは、今のところ未定である。しかし、レポーターの予想では、残念ながらある程度の値上げは覚悟しなければならないだろうと思う。それは日本円とユーロの関係である。最近のユーロ高(あるいは円安とも言える)は、これまでになく進んでおり、このフェイスリフトは、為替価格調整の絶好のチャンスだと思うからである。もちろん日本向けモデルには納得に値するオプションの提供は期待できるだろう。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年6月号より)

画像: インテリアデザインは従来どおり。いかにもフォルクスワーゲン車らしい機能性と高品質感がある。

インテリアデザインは従来どおり。いかにもフォルクスワーゲン車らしい機能性と高品質感がある。

ヒットの法則のバックナンバー

This article is a sponsored article by
''.