2005年、初代トゥアレグにW12気筒エンジンを搭載したモンスターSUVが登場し世界を驚かせた。現在の「スーパーSUV」の元祖とも言える存在で、フォルクスワーゲン初の1000万円超えも話題となった。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年8月号より)

高価だけど“2倍”の価値あり

昨年2004年秋のパリモーターショーでデビューした「トゥアレグW12」、つまりW型12気筒エンジン搭載モデルは500台が限定生産され、そのうちの100台が日本に導入されることになった。

このW12気筒エンジンはもともとスポーツカー用として開発されたもので、2002年にイタリアのナルドで24時間の平均速度322.89km/hという世界記録を達成したお墨付きのパワーユニットだ。現在W12気筒エンジンはフォルクスワーゲン フェートン、アウディA8、ベントレー コンチネンタルGT(ツインターボ化)に搭載されている。総排気量は5998ccで自然吸気が450ps、ツインターボは560psというモンスターだ。トゥアレグに搭載されるのは前者で、出力は同じだが最大トルクは吸排気系のチューニングが施され、20Nmほどアップしている。

さて、トゥアレグは日本市場でV6(3.2L)とV8(4L)がラインナップされているが、売れ筋は圧倒的にV6で70%以上を占める。国産車からの乗り換え組が多く、ほとんどがレザーパッケージのオプションを選択するのだそうだ。価格が現実的なことも人気の要因だろう。

ではこの「トゥアレグW12」はというと、V6のピッタリ2倍の価格なのが面白い。523.95万円×2=1047.9万円(税込み)というわけだ。この価格は「高いが安い」ということになる。

ライバル関係にあるメルセデス・べンツG500L、レンジローバー・ヴォーグ、ポルシェ・カイエンターボはすべて1000万円超。しかしこれらのモデルはすべてV8エンジン搭載車なのだ。世界のビッグSUV中、唯一の12気筒、しかも限定車となればこのプライスは高くはない。

エクステリアでノーマルと大きく異なるのは、フロントとリアに配された専用デザインのアルミプレート付きバンパー、ワイドフェンダー、左右4本出しのエキゾーストパイプ。大人しいというか、いささか地味すぎるトゥアレグのボディが格段に逞しくなった。

足元は275/40R20というファットな大径タイヤでこれまた力強い。サスペンションはV8仕様に標準装備(V6はオプション)されるCDCエアサスペンションをベースにスタビライザーを大径化し、ロールを抑えたスペシャルセッティングだ。

スターターボタンを押し、エンジン始動。ピストンが12個賑やかに動いている感じはなく、粛々と息づいていて、まことに穏やかなアイドリングだ。

インパネや内装は基本的にV8と同じで特別な装備はない。シートはレザーとアルカンタラがあしらわれた専用スポーツタイプが奢られ、手触り、ホールド性ともにベリーグッド。

街中に乗り出すと、まずエンジンのジェントルさがよくわかる。カイエンターボのような猛々しさはなく、ひたすらスムーズに2.5トンのボディを運ぶ。6速ATのパドルシフトでスポーツカー的に加減速して楽しむことももちろんOKだ。グイッとアクセルペダルを踏みつけると、それはまさしく「高級セダン」の加速フィーリングそのものであった。

またエアサスのダンパーは減衰力を3段階に設定できる(AUTO=ミディアム、COMFORT=ソフト、SP0RT=ハード)から走行条件に応じて使い分ければさらに快適。といっても普段はAUTOモードで十分にカバーしてくれる。トゥアレグW12スポーツは過剰性能ではない、「正しい12気筒車」ということになる。(文:御田昌輝/Motor Magazine 2005年8月号より)

画像: トゥアレグW12スポーツに搭載されるW型12気筒エンジン。V8並にコンパクトで軽量なことが特徴。

トゥアレグW12スポーツに搭載されるW型12気筒エンジン。V8並にコンパクトで軽量なことが特徴。

ヒットの法則のバックナンバー

フォルクスワーゲン トゥアレグW12スポーツ(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4470×1975×1710mm
●ホイールベース:2885mm
●車両重量:2570kg
●エンジン:W12DOHC
●排気量:5998cc
●最高出力:450ps/6000rpm
●最大トルク:600Nm/3300rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:1047万9000円(2005年当時)

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