1980年代のクルマといえば、ハイソカー、街道レーサー、そしてボーイズレーサーが人気を博していた。この連載では、ボーイズレーサーと呼ばれた高性能でコンパクトなハッチバックやクーペたちを紹介していこう。今回は「ホンダ シティターボ(AA)」だ。

ホンダ シティターボ(AA型・1982年9月発売)

画像: ノーマルの可愛らしいトールボーイスタイルはそのままだが、ボンネット上にパワーバルジを装着し、フロントグリルを変更。

ノーマルの可愛らしいトールボーイスタイルはそのままだが、ボンネット上にパワーバルジを装着し、フロントグリルを変更。

1981年(昭和56年)11月に登場したシティは、FF 2ボックスとしては車高が高めの1470mmというスタイルが特徴的だった。ボディを縦方向に伸ばしてスペースを作り出すという、いかにもホンダらしい画期的な手法で注目される。世界的にも当時こうした発想はなく、2ボックスならぬ1.5ボックスのトールボーイスタイルは「M・M(マンマキシマム・メカミニマム=人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に)思想」の究極とも言われた。

さらなる衝撃は、翌1982年9月のターボ投入だった。ホンダとしては2輪でCX500/650 TURBOを生産した実績はあったが、4輪では初。見るからに重心の高そうなボディに高出力エンジンを搭載して大丈夫なのか・・・、という声も上がったほどだった。

画像: 1.2Lながら電子制御燃料噴射のPGM-FIと小型ターボにより100psの高出力を発生した。

1.2Lながら電子制御燃料噴射のPGM-FIと小型ターボにより100psの高出力を発生した。

ハイパーターボと名付けられたER型エンジンは、高密度速炎燃焼原理を導入したCVCC-IIをベースに過給圧0.75kg/平方cmの小型高回転ターボを装着し、燃料供給装置はPGM-FIを組み合わせて、1231ccの3バルブSOHCからリッターあたり81psにあたる最高出力100ps/5500rpmと最大トルク15.0kgm/3000rpmを絞り出す。

NA(自然吸気)エンジンの50%増しのパワーに対応するためブロックの強化をはじめ、チタン添付アルミ合金シリンダーヘッドの採用やファンネル型燃焼室の容積拡大など、エンジンすべての諸元や構造の最適化を図り、結果的に90%以上の部品が新設計されたという。

同時に、プログレッシブコイルスプリングや前後スタビライザーを備えたハイパーサスペンション、クラス初の前輪ベンチレーテッドディスクブレーキ、HR規格の165/70タイヤの採用など、ホットな走りを支える装備も充実。さらにボンネット上のパワーバルジやグラフィックメーター、バケットシート、超太グリップのステアリングなど、ターボ専用の装備を満載してオーナーの心をくすぐった。

画像: タコメーターはアナログの回転式、その中央にスピードをデジタル表示。レッドゾーンは6000rpmからだった。

タコメーターはアナログの回転式、その中央にスピードをデジタル表示。レッドゾーンは6000rpmからだった。

そして1983年10月(発売は11月)、シティターボはシティターボIIに進化する。1.2Lターボの極限に挑んだモデルともいえるシティターボIIは、大型化されたパワーバルジや、前後にフレアフェンダーを備える精悍なスタイルから「ブルドッグ」の愛称で呼ばれた。

ターボエンジンにはインタークーラーを追加し、パワースペックは110ps/16.3kgmにアップ。モーターマガジン誌の実測テストでは、最高速度は171.06km/h、0→400m加速は15.92秒と、1.2Lとは思えないハイパフォーマンスを記録した。ただ、あまりに過激で、販売は今ひとつ伸び悩んだ。

また、鈴鹿サーキットではF2レースのサポートイベントとしてシティターボ(後にシティターボII)のワンメイクレースが開催され、大いに人気を博した。

画像: 1983年10月、シティターボはターボIIに進化。前後フェンダーは拡大され、インタークーラーも装着して110ps/16.3kgmにパワーアップ。

1983年10月、シティターボはターボIIに進化。前後フェンダーは拡大され、インタークーラーも装着して110ps/16.3kgmにパワーアップ。

ボーイズレーサー伝

ホンダ シティターボ(1982年)主要諸元

●全長×全幅×全高:3380×1570×1460mm
●ホイールベース:2220mm
●重量:690kg
●エンジン型式・種類:ER型・直4 SOHCターボ
●排気量:1231cc
●最高出力:100ps/5500rpm
●最大トルク:15.0kgm/3000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:165/70HR12
●価格:109万円

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