顔を変えただけで見事なイメージチェンジ
「フォルクスワーゲンも、ついに踏み切るのか……」という感じだろうか。このところ欧州メーカーは、ブランドイメージを確固たるものにするためということで、スタイリングアイデンティティの統一を図っているところが多い。
その尖兵となったのは、デザインディレクター、クリス・バングルを擁するBMWだ。ブックシェルフ理論に基づくデザインアイデンティティの統一はほぼ完成し、今は7シリーズのマイナーチェンジに見られるように、微調整の段階に入っていると言っていいだろう。
また、アウディはA4の大幅マイナーチェンジによるシングルフレームグリルの採用でその作業が一段落したところだ。また、ドイツメーカーにとどまらず、プジョー、シトロエン、ルノーなども、すでにその作業を終えたといっていいだろう。
さらにキャデラックは、ブランド再生のために、なかなか大胆なスタイリングイメージの統一をしたのは周知のとおり。オープンスポーツ(XLR)からSUV(SRX)まで、見事に統一感を出すことに成功している。
さて、こうした流れに一線を画していたのがフォルクスワーゲンだった。あまりにも強力なエース(ゴルフ)がいるので、そんなことは必要なかったのかも知れない。フォルクスワーゲン=ゴルフであり、それは揺るぎのないものだからだ。また、ニュービートルの存在も影響していたのだろう。このスタイリングは変えようがないからだ。
その結果、フォルクスワーゲンには大きく分けて4つのスタイリングアイデンティティがあった。それは、ゴルフ、ニュービートル、その上のクラス、その下のクラスの4つだ。
ここで紹介するポロは、下のクラスになるが、その個性はルポと共通する、かわいらしさを前面に出すものだった。それが今回のマイナーチェンジで、上のクラスである新型パサート(日本未導入)から始まったフォルクスワーゲンの新しい顔、「ワッペングリル」が採用された。いよいよフォルクスワーゲンも、デザインイメージの統一を始めようというわけだ。
日本には導入される予定はないが、ポロとルポの間のフォックスが、ワッペングリルの第三弾としてすでに登場している。
ご覧のように、従来モデルと並べて見ると、そのイメージの違いは歴然としている。180度違う方向に行った。顔の違いで、これだけ全体のイメージも変わるものかと感心する。実際に、Aピラーから後のボディパネルは一切変更されていない。そして、見事なのは、変更された顔とボディ全体が実によく馴染んでいるということだ。とても、Aピラー以降があの丸目でかわいい従来モデルと共通とは思えない。このデザイン力には感心する。
スタリングはガラリと変わったが、走りのメカニズムは基本的に変更がない。リアのダンパーとスプリング、ステアリングの制御が若干スポーツ方向になった程度だという。市街地と高速道路を試乗したが、相変わらずすべてがしっかりしている。どういう動作にも、手応えがきちんとあり、運転していて安心感がある。また、インテリアの質感も高い。手抜きを知らないフォルクスワーゲンの品質感は、コンパクトクラスでもいつものように高い。
不満はひとつ。力不足ということ。1.4L DOHCは75ps/126Nmのパワー&トルクだが、1160kgのコンパクトボディとはいえ、多くの場面で「モアパワーを」と感じさせる。ゴルフの6速ATによる快適さを知ってしまったせいか、高速巡航では4速ATのつらさも感じる。しかし、このクラスに6速ATを望むことはできない。すると、やはり、エンジンをもう少しという気がする。
ラインナップは4ドア(199万5000円)と2ドア(178万5000円)の2種で価格は据え置きというのは嬉しい。しかし、欧州には86psの1.4FSI搭載モデルがあり、今回の印象からすると、これはかなり良さそうだと想像できる。200万円ちょっとで、これを導入してくれると、もっと嬉しいのだが。(文:荒川雅之/Motor Magazine 2005年10月号より)
フォルクスワーゲン ポロ 4ドア(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:3915×1665×1480mm
●ホイールベース:2470mm
●車両重量:1160kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1389cc
●最高出力:75ps/5000rpm
●最大トルク:126Nm/3800rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:199万5000円(2005年当時)