センターミッドシップのリアルスポーツ!
このところ、話題になるクルマといえば、ほとんどがRV(編注:1996年当時)だ。今のところRVは新しく出せば売れるから、そっちに力が入るのはわからないでもないけれど、そのとばっちりを受けているのがスポーツカーというのがオレにはどうしょうもなく気に入らない。
でも、そんな風潮のなかでも、次世代スポーツカーを真剣に考えているメーカーはある。そのエライ筆頭はマツダなのだ。東京モーターショーにもRX−01と呼ぶスポーツカーのスタディモデルを出展していたが、これはデザインはショー用としても、技術的にはかなり現実味を帯びた内容。だから、いずれ形を変えてデビューする可能性がある。なんて思っていたら、これに乗れると言うじゃないか。
RX−01について簡単におさらいしておくと、マツダが世界で唯一生産しているREに新技術を盛り込んで搭載したFRスポーツである。REは13B型をベースとするが、サイド排気を採用して吸排気ポートの開口タイミングを最適化し、自然吸気で最高出力220ps/8500rpm、最大トルク22.0kgm/6000rpm(ともに目標値)を得ている。しかも潤滑にドライサンプ方式を採用し、RX-7に比べてエンジン搭載高を55㎜も下げ、搭載位置も後方に205mmもっていけたため、前輪軸中心よりも完全に後方にエンジンがマウントされるセンターミッドシップなのだ。
これが驚異的に低いボンネットの秘訣で、そこから生まれたワイド感あふれるスタイリングは、独特のウイング形状のリアビューとともに個性的で迫力たっぷり。ちなみに車重は1100kgだから1.6ℓ級スポーツ並みだ。
乗れるぐらいだから、これはホントに売る気か、と喜んだら、やはりショーに出したのが世の中にあるたった一台の試作車だそう。しかも、海外のショー展示も予定されているとあって、今回の試乗は助手席での体験走行がメイン。でも、マツダきってのドライバーが、全開で荒れた路面のハンドリング路を走行してくれたのだ。これだけでも、走りに相当な自信を持っていることが伺えるじゃないか。
RX-7によく似た形状のドアを開け、助手席に収まると、足元や頭上の広さは、RX-7よりもややタイト。でも、ワインレッドに塗装されたパッドやメーターナセルによって雰囲気はポップですらある。
夢のあるスポーツカーの姿をRX−01に見た
いよいよ発進だ。即座にスロットル全開。エキゾーストノートがこれまでのREのようにカン高いものではなく、低音の響きで凄みがあるのは、サイドポート化のためらしい。加速感は自然吸気らしい直線的なものだが、タコメーターを横目で見ていると、8500rpm以上まであっと言う間に達している。220psの数値から想像するより強いGが背中に感じられるところからして、高回転までしっかりとパワーが追従していそうだ。
シャシはロードスターがベースだが、サスペンションと駆動系はロードスターとRX-7用を混用して仕立てたという。
ともかく圧巻はコーナリングだった。これまでRX-7も鼻先が軽くヨー慣性モーメントが小さい、なんて思っていたけれど、コイツのノーズのシャープな動きはそんなもんじゃない。ステアリングを切ると、即座にノーズが狙った方向に向いていく。しかもロール方向の動きもしっかりと抑えられているから、S字の切り返しなんかでは、スパン、スパンと面白いように向きを変えてインをかすめていくのだ。しかも、リアはしっかりと追従して驚くほど安定している。こりゃあ凄いぜ。
最後にちょっとだけドライブさせてもらったが、その身軽な動きの片鱗だけはわかった。いま,マツダは厳しい経営環境(編注:1996年当時)だけど、それでも夢のあるスポ−ツカーを追い求めているのは立派。はやく元気を取り戻して、RX-01のような愉しいクルマを送り出して欲しい。
<RX-01主要諸元>
ボディサイズ:全長4055×全幅1730×全高1245mm
ホイールベース:2345mm
車両重量:1100kg
エンジン:2ローター(13B)
排気量:654cc×2
最高出力:220ps/8500rpm(目標値)
最大トルク:22.0kgm/6000rpm(目標値)
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ形式:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:(前)215/45R17 (後)235/45R17