1995年の東京モーターショーで公開されたコンセプトカー「RX-01」は、来たるべき時代を見据えた究極のロータリーパッケージだった。だが、さまざまな障害が発生した結果、残念ながらお倉入りしてしまった。このクルマこそFD3Sに続く次期RX-7になるはずだった。マツダの開発陣はそう考えていたに違いない。ショー閉幕直後に広島・三次テストコースでごく少数の媒体を招いて開催された同乗試乗会の記憶を紐解く。<ホリデーオート誌1996年1月26日号より>

センターミッドシップのリアルスポーツ!

画像: 車重はわずか1100kg。現在の自動車メーカーがやっきになって追求しているコンセプトをいち早く導入していた。

車重はわずか1100kg。現在の自動車メーカーがやっきになって追求しているコンセプトをいち早く導入していた。

このところ、話題になるクルマといえば、ほとんどがRV(編注:1996年当時)だ。今のところRVは新しく出せば売れるから、そっちに力が入るのはわからないでもないけれど、そのとばっちりを受けているのがスポーツカーというのがオレにはどうしょうもなく気に入らない。

でも、そんな風潮のなかでも、次世代スポーツカーを真剣に考えているメーカーはある。そのエライ筆頭はマツダなのだ。東京モーターショーにもRX−01と呼ぶスポーツカーのスタディモデルを出展していたが、これはデザインはショー用としても、技術的にはかなり現実味を帯びた内容。だから、いずれ形を変えてデビューする可能性がある。なんて思っていたら、これに乗れると言うじゃないか。

RX−01について簡単におさらいしておくと、マツダが世界で唯一生産しているREに新技術を盛り込んで搭載したFRスポーツである。REは13B型をベースとするが、サイド排気を採用して吸排気ポートの開口タイミングを最適化し、自然吸気で最高出力220ps/8500rpm、最大トルク22.0kgm/6000rpm(ともに目標値)を得ている。しかも潤滑にドライサンプ方式を採用し、RX-7に比べてエンジン搭載高を55㎜も下げ、搭載位置も後方に205mmもっていけたため、前輪軸中心よりも完全に後方にエンジンがマウントされるセンターミッドシップなのだ。

画像: FD3Sより20㎝以上短くホイールベースも8㎝短い。エンジンはキャビン側に55㎜寄せられ、ドライサンプ化により55㎜低く搭載されている。限界まで下げられてボンネットはエアロダイナミックウイング形状とされてCd値の低減とダウンフォースの増大を狙う。

FD3Sより20㎝以上短くホイールベースも8㎝短い。エンジンはキャビン側に55㎜寄せられ、ドライサンプ化により55㎜低く搭載されている。限界まで下げられてボンネットはエアロダイナミックウイング形状とされてCd値の低減とダウンフォースの増大を狙う。

これが驚異的に低いボンネットの秘訣で、そこから生まれたワイド感あふれるスタイリングは、独特のウイング形状のリアビューとともに個性的で迫力たっぷり。ちなみに車重は1100kgだから1.6ℓ級スポーツ並みだ。

乗れるぐらいだから、これはホントに売る気か、と喜んだら、やはりショーに出したのが世の中にあるたった一台の試作車だそう。しかも、海外のショー展示も予定されているとあって、今回の試乗は助手席での体験走行がメイン。でも、マツダきってのドライバーが、全開で荒れた路面のハンドリング路を走行してくれたのだ。これだけでも、走りに相当な自信を持っていることが伺えるじゃないか。

RX-7によく似た形状のドアを開け、助手席に収まると、足元や頭上の広さは、RX-7よりもややタイト。でも、ワインレッドに塗装されたパッドやメーターナセルによって雰囲気はポップですらある。

夢のあるスポーツカーの姿をRX−01に見た

いよいよ発進だ。即座にスロットル全開。エキゾーストノートがこれまでのREのようにカン高いものではなく、低音の響きで凄みがあるのは、サイドポート化のためらしい。加速感は自然吸気らしい直線的なものだが、タコメーターを横目で見ていると、8500rpm以上まであっと言う間に達している。220psの数値から想像するより強いGが背中に感じられるところからして、高回転までしっかりとパワーが追従していそうだ。

シャシはロードスターがベースだが、サスペンションと駆動系はロードスターとRX-7用を混用して仕立てたという。

画像: ゼロリフトを実現するためにリアフロア&アンダーウイングを採用して、フロントとバランスをとる。

ゼロリフトを実現するためにリアフロア&アンダーウイングを採用して、フロントとバランスをとる。

ともかく圧巻はコーナリングだった。これまでRX-7も鼻先が軽くヨー慣性モーメントが小さい、なんて思っていたけれど、コイツのノーズのシャープな動きはそんなもんじゃない。ステアリングを切ると、即座にノーズが狙った方向に向いていく。しかもロール方向の動きもしっかりと抑えられているから、S字の切り返しなんかでは、スパン、スパンと面白いように向きを変えてインをかすめていくのだ。しかも、リアはしっかりと追従して驚くほど安定している。こりゃあ凄いぜ。

最後にちょっとだけドライブさせてもらったが、その身軽な動きの片鱗だけはわかった。いま,マツダは厳しい経営環境(編注:1996年当時)だけど、それでも夢のあるスポ−ツカーを追い求めているのは立派。はやく元気を取り戻して、RX-01のような愉しいクルマを送り出して欲しい。

<RX-01主要諸元>
ボディサイズ:全長4055×全幅1730×全高1245mm
ホイールベース:2345mm
車両重量:1100kg
エンジン:2ローター(13B)
排気量:654cc×2
最高出力:220ps/8500rpm(目標値)
最大トルク:22.0kgm/6000rpm(目標値)
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ形式:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:(前)215/45R17 (後)235/45R17

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