クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第37回は「ランチア デルタS4」だ。

ランチア デルタS4(1985-1986年)

画像: 折り紙細工のような面構成のボディパネルは、先代のラリー 037のような美しさはないが迫力は満点。リアクオーターの巨大なエアインテークも特徴的。

折り紙細工のような面構成のボディパネルは、先代のラリー 037のような美しさはないが迫力は満点。リアクオーターの巨大なエアインテークも特徴的。

ラリー 037で1983年のWRCメイクスチャンピオンとなったランチアだが、もはやミッドシップRWDでは限界が見えており、次なるウエポンとして1985年末に送り出したのが、デルタS4だった。その車名から推測できるように、ボディシルエットはFF2BOXのデルタを継承しているが、クロームモリブデン鋼によるフレームにグラスファイバー製のボディを組み合わせ、ノーマルのデルタとの共通部品はきわめて少ない。ちなみに、S4のSはスーパーチャージャー、4は4WDを意味する。

グループBの規定によりデルタS4は200台が生産され、このうち20台は本来の目的であるWRCへ参戦するためのコンペティツィオーネに改良され、残りの180台がストラダーレとして限定販売された。ストラダーレではグラスファイバー製だったボディは、コンペティツィオーネではさらなる軽量化と剛性の確保を狙ってカーボンファイバー製へ変更され、フレームには一部チタニウムが用いられていた。

ミッドシップ搭載されるエンジンは、KKK製のターボチャージャーとアバルト製のスーパーチャージャーというダブルの過給システムを備えた1759ccの直4DOHC 16バルブ。これは前回紹介した205ターボ16同様、当時の規定で過給器係数の1.4をかけても排気量を2500cc以下に収めるためだった。また、それぞれの過給器用にインタークーラーも2つ備えられていた。

画像: 巨大なツインインタークーラーの奥に鎮座するパワーユニットの要所には「ABARTH」のロゴが刻まれている。

巨大なツインインタークーラーの奥に鎮座するパワーユニットの要所には「ABARTH」のロゴが刻まれている。

ターボで過給された空気はインタークーラーを経てスーパーチャージャーに導入され、再度インタークーラーで冷却されてエンジン燃焼室に至るという、複雑な過給システムだった。パワースペックはストラダーレでも最高出力は250ps、最大トルクは29.7kgmを発生したが、WRC参戦マシンでは最終的には600psを超えるレベルにまで増強されていたという。

もちろん駆動方式はフルタイム4WDで、センターデフにビスカスカップリングを採用していた。サスペンションは前後ともラリー 037からランチアが積極的に採用してきたダブルウイッシュボーン。そのジオメトリー設定の自由度は高く、フロント側ではウイッシュボーンのピボット変更も可能な構造だった。

1985年11月のRACラリーでデビューウインを飾ったデルタS4は、その後もランチアの狙いどおりの大活躍を続けるが、1986年のツール・ド・コルスでドライバーのトイヴォネンとコ・ドライバーが事故死。これを機にグループBによるWRCは1986年シーズンで終了することとなり、デルタS4はランチアのワークスWRCマシンで唯一、無冠のモデルとなった。

画像: ストラダーレのボディはグラスファイバー製。Cピラー部の大きな「耳」はインタークーラーに冷気を導くインテーク。

ストラダーレのボディはグラスファイバー製。Cピラー部の大きな「耳」はインタークーラーに冷気を導くインテーク。

ランチア デルタS4 ストラダーレ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4005×1800×1400mm
●ホイールベース:2440mm
●重量:1200kg
●エンジン種類:直4 DOHCターボ+S/C
●排気量:1759cc
●最高出力:250ps/6750rpm
●最大トルク:29.7kgm/4000rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップ4WD
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/55VR16

This article is a sponsored article by
''.