メルセデス・ベンツ Sクラス(2003年:4代目マイナーチェンジ)
昨年(編集部註:2002年)の秋にマイナーチェンジが施された、4代目メルセデス・ベンツ Sクラス。最大の特徴は、「プレセーフ」と呼ばれる安全装備を装着したこと。車両が衝突直前の状態を検知すると、シートベルトテンショナーがベルトを巻き上げたり、助手席のシートバックを安全な位置に起こしたり、サンルーフが開いていたら自動的に閉じる、という優れものだ。
エクステリアでは前後バンパーやフロントグリル、リアコンビランプなどのデザインが変更され、インテリアではウッドパネルやドア内張りなどのデザインが変更されている。エンジン ラインアップはかなり変わった。トップグレードのS600はV12 SOHCエンジンの排気量が5.8Lから5.5Lにダウンされたがツインターボ化され、最高出力は500ps、最大トルクは81.6kgmと、従来型より133psと27.5kgmものパワーアップが図られている。
今回は、このS600を中心に、3.7Lの新エンジンを搭載したS350にも短時間だが試乗できた。S600はロングボディのみの設定なので、正しくはS600Lとなる。マイバッハ由来のエンジンは、わずか1800rpmで最大トルクを発生し、それを3500rpmまで持続する。メーカー公表値の0→100km/h加速は、4.8秒!
5mを超える全長と1.9m近い全幅を気にしながら走り始める。アクセルペダルにそっと足を乗せているだけで、S600Lは普通に走ってくれる。街中を走っている限りは、恐ろしく静かだ。高速道路に乗ったところで、右足に少しだけ力を入れると、ターボラグはほとんどなくトルクの塊が加速させていく。とても車両重量が2トンを超えたサルーンとは思えない。まさに、モンスターだ。
S600Lにはアクティブ ボディ コントロール(ABC)と呼ばれるアクティブサスペンションも標準装備される。高速道路の路面の継ぎ目などもスムーズにいなし、乗り心地はきわめて快適。スポーツモードにすればコーナリング時のロールも抑えられるというが、今回はそこまで試す機会はなかった。
シートは前後ともヒーター&ベンチレーター付きで、フロントシートはコーナリングに合わせてサイドサポートが変わるモードも備わる。リアシートも座面はスライド可能でウッドテーブルや読書灯も備わっている。このクルマのオーナーになったら、このリアシートで寛ぐことがほとんどだろうが、たまには自分でステアリングを握ってみたくなる。S600Lは、そんなフラッグシップ サルーンだった。
S600Lのあとに3.7L V6を搭載したS350に乗ると、かなりガッカリさせられるだろうなと思ったが、意外やこれがよく走る。パワースペックは245psと35.7kgmだが、エンジンは思ったよりも軽やかに回る。S600Lより気筒数が半分になり、車両重量は200kg以上も軽くなっているおかげで、Sクラスに乗っていることを忘れそうな軽快感を与えてくれた。
S600Lが手に入れられるのなら最高だが、S350であっても引け目を感じることはない。Sクラスとしての本質に大きな違いはないのだから。
※「懐かしの輸入車」は、今回で終了します。
■メルセデス・ベンツ S600L 主要諸元
●全長×全幅×全高:5165×1855×1445mm
●ホイールベース:3085mm
●車両重量:2100kg
●エンジン形式:V12・3バルブSOHCツインターボ・FR
●排気量:5513cc
●最高出力:368kW(500ps)/5000rpm
●最大トルク:800Nm(81,6kgm)/1800-3500rpm
●トランスミッション:5速AT
●タイヤ:前245/40R18、後265/40R18
●車両価格(当時):1580万円