2007年10月、2代目となる新型スマートフォーツーが日本に上陸している。早過ぎたとも言われる初代の誕生から8年、世界的に見れば思うようには販売が伸びなかった先代からどこがどう変わったのか。Motor Magazine誌では、メルセデス・ベンツ特集の中で、スマートに託された狙いに着目しながら試乗テストを行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年4月号より)

メルセデス・ベンツがスマートに与えている存在意義

今度のスマートはすべてにわたって、これまでの「大きなオモチャ」的な特殊性を取り除いている。カッコこそ特殊ながら、乗れば「フツー」のクルマと何ら変わらなくなっているのだ。

これは、より多くのユーザーを掴む上では好ましい進化である。一方で、残念なのが価格のアップ。加えて、先代で標準装備だったもの、たとえばアルミホイールやサブメーターなどがオプション扱いとなっている。クーペの乗り出し価格が約200万円というのは、サイズからみれば「高い」と感じる人が多いのではないだろうか。

思えばスマートは一時、メルセデス・ベンツの非採算部門ということで「次期モデルはないのでは⋯⋯」とも噂された。確かに、他車種に流用がきかない専用部品だらけなのに加え、ESPをはじめとした安全装備の充実など、サイズの割にはコストがかかっていた。年間30万台が採算分岐点とも言われ、そこに達していなかったため継続が危ぶまれていた。だが、こうして2代目が誕生した背景には、CO2の「140g/km」規制があったからに他ならない。メルセデス・ベンツにとっては高級乗用車のSクラスを販売するには、相対として、燃費の良いスマートの存在が欠かせないのである。

かくして生まれた新型スマートは、基本レイアウトは変えずに、エンジンにかつて関係があった三菱自動車製を採用するなどしてコスト負担を減らしている。小排気量をターボで補ってきたエンジンをNA主体にしたのは、コスト面のみならず、アメリカでの販売開始という一面があったからだろう。

スマートはローマやパリといった駐車難のヨーロッパ都市部で人気を博している。それは納得いく話だが、果たして広大なアメリカで小さなスマートは成功するのだろうか。まずは1.3万台の受注という好スタートを切ったが、これが継続性を持つか否かが、メルセデス・ベンツにとって大きな課題になるだろう。今回のあらゆる面で「フツー」になったスマートの背景には、こうしたグローバル化への対応があったに違いない。(文:河原良雄/Motor Magazine 2008年4月号より)

画像: 直線的なデザインへと変わった新型のインパネ。新型となり質感は向上した反面、個性的なポップな印象はやや薄らいでいる。

直線的なデザインへと変わった新型のインパネ。新型となり質感は向上した反面、個性的なポップな印象はやや薄らいでいる。

ヒットの法則

スマート フォーツークーペ 主要諸元

●全長×全幅×全高:2720×1560×1540mm
●ホイールベース:1865mm
●車両重量:810kg
●エンジン:直3DOHC
●排気量:999cc
●最高出力:71ps/5800rpm
●最大トルク:92Nm/4500rpm
●駆動方式:RR
●トランスミッション:5速AMT
●車両価格:176万円(2008年)

スマート フォーツーカブリオ 主要諸元

●全長×全幅×全高:2720×1560×1540mm
●ホイールベース:1865mm
●車両重量:830kg
●エンジン:直3DOHC
●排気量:999cc
●最高出力:71ps/5800rpm
●最大トルク:92Nm/4500rpm
●駆動方式:RR
●トランスミッション:5速AMT
●車両価格:205万円(2008年)

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