2008年、3代目W204型CクラスのAMGモデルが上陸している。アウディRS4、BMW M3クーぺの後を追うように、C63AMGはV型8気筒エンジンを搭載して登場、ハイパフォーマンスカー市場に敢然と討って出た。Motor Magazine誌では、この史上最強のCクラスに注目、アウディRS4、BMW M3クーぺとの違いを考察しながら試乗を行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年7月号より)

引き締まった足まわりは高いボディ剛性の賜物

もっとも、その盤石ぶりと引き換えに街中での乗り心地はしなやかとは言い難く、路面の細かな凹凸や段差を忠実に拾ってしまう。試乗車が履いていた19インチのタイヤ&ホイールのせいもあるのかもしれない。首都高速の路面の継ぎ目などもいちいち跳ねてしまう。電子制御式ダンパーのEDCが上質な乗り心地を実現しているM3との違いはここでも顕著と言える。

ただし、それもただ闇雲に硬いわけではなく、目地段差などで跳ねた後、着地の際には短いストロークの中でしっかり足を沈ませて急激な接地性の変化を抑えている。IS Fのように跳ねっぱなしというわけではない。それどころか単に硬いだけのC300アバンギャルドSと較べても、引き締まっているという表現が適当だと思えるくらいだ。それはボディからステアリングからサスペンションまで、すべてにきわめて高い剛性感の賜物でもある。

いずれにせよ、硬いから不満なのかと言えば、要はそんなことはない。十分許容範囲だと言ったら矛盾して聞こえるだろうか。だが、これはAMGなのだ。こうしたハイパフォーマンスカーの乗り心地には色々な評価軸があるだろうが、いわゆる快適性を重視するならば選択肢は他にもある。AMGに求めるべきはそこではないはず。乗り心地が良いに越したことはないが、八方美人で中途半端になるより、この方が余程いいというのが僕のスタンスだと理解していただければと思う。

もちろん、硬い乗り心地を納得させるには、それだけの果実が必要だ。C63AMGの場合、それは言うまでもなく運動性能の良さということになる。そして、それは見事に達成されていると言っていい。

しかも、それは飛ばさなければわからないというものではない。車速感応式のAMGスポーツステアリングは、ベース車の14.5:1から13.5:1へとギア比を速めたおかげもあって、軽くはないはずのノーズを鋭くインへと抉り込ませる。V型8気筒エンジンの存在を意識させない、というほどではない。しかし妙に突っ張ることのない自然な手応えで外輪を沈み込ませ、タイヤのグリップをしっかり引き出した自然なターンインの姿勢に持ち込めたならば、まさにこっちのものだ。

しかし嬉しくさせるのはその鋭さよりも、むしろその時の豊かなフィードバックの方である。ベースのCクラスは軽い操舵感の一方で路面感覚が今ひとつ頼りないのだが、C63AMGはまるで掌にタイヤの状況が余さず伝わってくるような感覚を示す。ゆっくり走っていても気持ち良く、クルマとのこの上ない一体感に浸れるのは、まさにそのおかげ。これはM3にもRS4にも、IS Fにも圧倒的に勝る部分である。

もちろん、その真髄に触れたいと願うなら、ブレーキングをもう少し遅らせて、そしてもうワンテンポ早くアクセルを踏み込んでみればいい。オン/オフに加えてスポーツモードを用意した3モードESPは、スポーツに設定だ。

制動性能は文句なし。タッチも剛性感に富み自在にコントロールできる。ステアリングを切り込み、姿勢が多少不安定になっても、スポーツモードではある程度までその動きを許容してくれる。要はそれを利用してクルマを曲げることを楽しめるのである。

向きが変わったらアクセルオン。この時のトラクションも素晴らしい。そのソリッドな接地感は、多少乱暴に踏みつけてもその大出力を確実に路面に伝え、クルマを前に進めてくれる。今操っているのが457psのFRだということ、何度も忘れそうになってしまった。

画像: 3本スポークのAMGパフォーマンスステアリングホイールは直径365mm。フラットボトムデザインを採用し、パドルシフトも装備される。

3本スポークのAMGパフォーマンスステアリングホイールは直径365mm。フラットボトムデザインを採用し、パドルシフトも装備される。

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