ICEとEVの垣根を取り払った「パワー オブ チョイス」コンセプト
プジョーをはじめシトロエンやDSなど、多くのブランドを展開するグループPSA。2020年7月に行われた新型プジョー208の国内発表会では、ガソリンターボエンジンを搭載するICE(内燃機関)仕様と、ピュアEVのe208を同時にお披露目した。
とくに電動化をフィーチャーすることなく同列的に扱い、ユーザーの使い方や好みで動力源を選ぶ「パワー オブ チョイス」という姿勢を標榜している。「EVは特別ではなく、身近な存在だ」と静かに主張しているように思える。
エンジンとモーター、ガソリンタンクと大容量の蓄電池といったように、パワートレーンが異なればそれに伴う搭載物も違ってくる。にもかかわらず、スタイリングや居住性/実用性の共通化を可能にしたのは、グループSPAがB/Cセグメント用に新開発したCMP(コモンモジュラープラットホーム)が、電動化を前提に設計されていたからに他ならない。
E208では、電気モーターをパワーコントロールユニットとともにボンネット下に搭載し、フロントシート下、センタートンネル、そしてもともと燃料タンクがあったリアシート下にリチウムイオン電池を分散配置している。もちろんそれはかなりの重量物なので、多少の補強は必要だ。トーションビーム式リアサスペンションには、パナールロッドも追加されている。とはいえ、基本的にはICEと共通のCMPで電動化を成立させているのは見事だ。
運転の方法も、ICEモデルとまったく同じ。スタートスイッチでシステムを起動してもエンジンが目覚める音や振動は皆無だが、シフトレバーでレンジを選びアクセルペダルを踏み込めば実にスムーズに、するすると走り出す。加速感はとてもシャープだ。アクセルレスポンスが良く、実用域での速度制御をスムーズかつ正確に行える。80km/hあたりまでなら「ホットハッチ」と評してもいいほど元気いっぱい。しかも、それを静かな環境で楽しめるのだ。
一方、本来なら高速域ではやや頭打ち感が出てくるのも電気モーターの特質。だがe208はエモーショナルな気持ち良さにもこだわっているようで、少なくとも100km/hまでは適度な伸び感を味わわせてくれた。