同グレード=同装備。グループPSAはICE(内燃機関)とピュアEVの垣根を、一気に乗り越えようとしている。ライフスタイルに合わせて選ぶパワートレーンとして電気モーターは今、ガソリンエンジンと同じ土俵に。スポーティとエレガント、個性のチョイスもまた悩ましく楽しい。(Motor Magazine2021年1月号より)

ドライブモードは3種類減速フィールの強弱も選べる

ICEモデルと同様に、シフトレバー横のスイッチでドライブモードを選択することができる。もっともおとなしいエコモードでは、82ps/180Nm、ノーマルモードでは109ps/220Nmとモーターの出力そのものも変化する。今回はパフォーマンスを試すためフルパワーの136ps/260Nmを発生するスポーツモードで走る機会が多かったが、ノーマルモードでもレスポンスは良好。さすがにエコだと少し頼りないものの、エコランと割り切るなら納得できる性能レベルだ。

エネルギー回生時の減速フィールはとても自然。Dレンジからもう一段手前に引くとB(ブレーキ)レンジに入るが、アクセルペダルを戻した時の減速感はかなり強くなる。そのギャップはやや大きく、好みとしてはもう1段、マイルドな減速モードが欲しかった。停止まで含めた加減速をアクセルペダルの操作だけで行う、「1ペダル制御」には対応していない。

大容量バッテリーを積むe-208は、ICEモデルに対して車両重量が330kg0ほど重い。これがフットワークにどんな影響を与えているかが気になっていたが、乗り心地が固くなっているような印象はまったくなかった。どちらかと言えば重厚感がプラスされる感覚で、ロールが少なくフラットな姿勢を維持してくれる。

荒れた路面ではやや跳ね気味だが、それはICEEモデルでも共通。やや締まり気味にしてスポーティな味わいを強調する味付けは、最近のプジョー流だ。おかげでワインディングロードでの身のこなしは、小径ステアリングの操作感も含めてキビキビ、軽快だった。

ところで、この新しいプラットフォームを使ったBEVのシステムは、他ブランドでの水平展開が始まっている。今回、e-208とともに味わったDSクロスバックE-テンスもその一台だ。ちなみに「E-テンス」とは、DSブランドの電動化モデルに付けられるサブネームとなる。

DS3クロスバックE-テンスは全長、全幅、全幅のすべてで、カジュアルコンパクトなe-208よりひとまわり大きい。ホイールベースも20mmほど拡大されているが、SUVとしてはかなりコンパクトな部類に入る。

このクルマで注目すべきは、やはり凝りに凝った内外装だろう。Bピラー付け根の逆シャークフィン形状や、側面の大胆なキャラクターライン、特徴的な表情のDSマトリクスLEDビジョンと微妙な曲線のランニングライト、リトラクタブルドアハンドルなど、外観のデザイン性だけでも見どころ満載。さらにシートなどに本革をふんだんに使ったインテリアはもっと凄い。菱形を重ねたインストルメントパネルや「クルドパリ文様」のセンターコンソールなど、各部にきめ細かく優雅な装飾が施されている。

内外装ともにスポーティな仕立てとなるe-208も質感という面ではかなり頑張っていたが、プレミアムを標榜するDSはやはりレベルが違う。DSクロスバックE-テンスはコンパクトながら、実にエレガントな印象だ。

画像: 1クラス上の重厚感と快適性。ピュアEVとしての素性の良さが光る。<DS3クロスバックE-テンス グランシック>

1クラス上の重厚感と快適性。ピュアEVとしての素性の良さが光る。<DS3クロスバックE-テンス グランシック>

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