ポルシェが理想とするフル電動スポーツカーであり、次世代モビリティであるタイカンの日本での試乗がついに叶った。今回の試乗は、電気自動車では異例の京都→長野→東京→栃木→東京という約1000kmほどのロングドライブも実施、そこでわかったターボと4S、2台のタイカンで詳細をたっぷりお届けする。(Motor Magazine2021年2月号より)

4S/ターボ/ターボSでは出力とトルクが違っている

ターボとターボSの主な違いは、モーターの出力と最大トルク値にある。ターボの最高出力680ps/最大トルク850Nmに対してターボSは最高出力761ps/最大トルク1050Nmとなる(出力はオーバーブースト時)。この結果、0→100km/h加速は、ターボの3.2秒に対してターボSは2.8秒とはっきり差がつけられた。

ただし、バッテリー容量は93.4kWhで共通である。このため航続距離(WLTC値)は、ターボの383−452kmに対してターボSは390−416kmとなる。ターボの方が航続距離の幅が広いのは謎だが、回生ブレーキの効率などが影響しているのかもしれない。いずれにせよ、最高出力が大きくなると決まって燃費が悪化する内燃機関とは、また違ったファクターがありそうだ。

画像: 試乗車のタイカン4Sには、オプションのパフォーマンスバッテリープラスを装着していた。

試乗車のタイカン4Sには、オプションのパフォーマンスバッテリープラスを装着していた。

いっぽうの4Sは、オーバーブースト時の出力が530ps、最大トルクが640Nmに抑えられているが、それ以上に大きな違いがバッテリーの容量で、ターボ/ターボSより15%ほど少ない79.2kWhとなる。そのおかげもあり、価格は1448万1000円と、ターボの2023万1000円やターボSの2454万1000円に比べて割安感がある。しかし、航続距離は335−408kmに留まる。

ところが、4Sにパフォーマンスバッテリープラスというオプション(108万6000円)を追加すると、バッテリー容量はターボ/ターボSと同じ93.4kWhとなり、航続距離も389−464kmまで伸びる。オーバーブースト時の出力も571ps、最大トルクも650Nmにアップ。つまり、ターボ/ターボSほどのパワーが必要なければ、4Sとパフォーマンスバッテリープラスの組み合わせは、かなり魅力的な選択肢なのだ。

今回は、その4S+パフォーマンスバッテリープラスとターボの2台で高速道路、一般道、ワインディング路で試乗したので、その様子をリポートしよう。

先に試乗したのはターボ。これが面白いことに、先日試乗したタイプ992の911ターボSと極めて近い印象だった。とにかくクルマの動きがどっしりしていてスタビリティ感が極めて強い。しかも、アンチノーズダイブがかなり利いているらしく、強めのブレーキをかけてもほとんどノーズは沈まない。

これは加速時も同じで、スクワットが意識されることはほぼ皆無である。850Nmの大トルクを受け止める足まわりだから、こうせざるをえなかったこともわかるが、おかげで荷重移動をしている実感が湧かず、しかもロールもほとんどしないため私にはコーナリングの限界点が掴みづらかった。

画像: フロントのトランク容量は4S、ターボとも81L。機内持ち込み用キャリーケースがひとつ入る。

フロントのトランク容量は4S、ターボとも81L。機内持ち込み用キャリーケースがひとつ入る。

ただし、タイカンはコーナリングの際に荷重移動なんかしなくても、ハンドルを切れば切っただけ自動的にノーズの向きは変わっていく。この点も、911ターボSと実によく似ていると感じた。

一方の4Sは、ターボよりも足がしなやかに動く。絶対的なストローク量は決して大きくないものの、ある程度以上の加速や減速であればピッチングを看取できるから、自分で荷重移動している実感はターボより強い。

おかげで前輪にしっかり接地圧をかけて曲がっている感触が味わえ、足がよく動くクルマでドライビングのイロハを学んだ世代には扱いやすい。もっとも、ハンドルさえ切れば荷重移動をさぼってもグイグイと曲がっていく点はターボとよく似ていた。

そんな、あまりにも簡単にノーズの向きが変わるところは、あたかもブレーキ トルクベクタリングばの利きが強いクルマのようだが、タイカンには、PTV(ポルシェトルクベクトリング)プラスの文字は見当たらない(ターボはPTVプラスを標準装備)し、トルクベクタリング特有の不自然さも感じない。それでもタイカンは本当によく曲がる。しかもコーナリング性能が恐ろしく高く、公道ではコーナリング限界まで追い込めなかった。これもまた、驚くべきことだろう。

画像: ラゲッジルーム容量は406L(ターボは366L)で、後席を倒せるのでかなりの容量を積める。

ラゲッジルーム容量は406L(ターボは366L)で、後席を倒せるのでかなりの容量を積める。

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