持て余さない大きさがスポーツSUVの証
さて、本題のQ5に話を戻す。アウディA5/A4のアーキテクチャーを取り入れた、全長4629mm、全幅1880mm、全高1653mmのスリーサイズを持つフルタイム4WDのSUVである。ホイールベースはA4と同じ2810mm。真っ向勝負となるであろうBMWのX3とボディサイズを比較すると、全長が64mm、全幅も25mmプラスだが、全高は22mmマイナス。BMWのX6に通じる「非SUV的」なクーペ的プロポーションである。
Cd値は0.33で、このカテゴリーでトップに位置するQ7は大きく近寄りがたい感じもするが、Q5は「フツーの大きさ」である。
デザインは近代アウディの彫刻的かつエレガントな造形で、ひと目でわかる大型シングルフレームグリルが際立つ。そしてヘッドランプはLEDデイライトランニングライトつき。大径ホイールと伸び上がるアクセントライン、なだらかに流れるルーフラインがクーペ的雰囲気を醸し出している。このあたりのまとめ方はさすが、である。
アウディQ5に搭載されるエンジンは3種類。2.0TFSIの直4ガソリンターボ(211ps)、2.0TDIの直4ディーゼルターボ(170ps)、そしてトップグレードの3.0TDIのV6ディーゼルターボ(240ps)である。日本導入は当面はガソリンのみとなるが、オフィシャル資料によると2.0TFSIのスペックは0→100km/h加速タイムが7.2秒、最高速度が222km/h。
アウディQ5にあって、A4、A5にないものが新開発の7速Sトロニックだ。このデュアルクラッチ式トランスミッションは、縦置き用で大トルクにも対応できるようになったことがビッグニュースである。今後アウディ各車に拡大採用されるというからアウディのパフォーマンスはさらに向上するだろう。今やエンジンの制御技術とトランスミッションの技術が真剣に問われる時代。問題は「燃費」をいかにして向上させるか、それがメーカーの責任だからである。
ところでこの新7速Sトロニックは、横置きエンジン用のの乾式7速Sトロニックとはまったく別物である。
さあ、新しいQ5に乗ってみよう。舞台はスペイン・バレンシアである。まず日本に来年(2009年、時期は未定)導入される2.0TFSI搭載モデルから試す。このエンジンは従来型のディメンジョンを維持しているが、全面的に再設計されたもの。新しいバルブリフトシステムを採用し、バルブリフト量は2ステージで可変制御される。そしてエンジン内部の摩擦抵抗を徹底的に低減し、さらにターボチャージャー、インタークーラーも軽量化と高効率化が図られている。
シートに腰をおろしポジションをセットする。インテリアの景色はアウディのお約束通り質感が高く、ドライバーはリラックスできる。ドイツでは最近、後方視界確保のためサイドミラーの大型化が義務づけられたそうで、ミラーが干渉して斜め直前はややうっとうしいが、アイポイントの高さもあって全周囲の視界は良好な部類。車幅感覚も掴みやすく、混雑した市街地でもストレスは感じなかった。
テストルートはバレンシア空港を起点に高速道路と平野部、丘陵地帯の一般道。2.0TFSIエンジンは活発かつトルキーであたかも排気量が3Lオーバーの感じ。なにしろ最大トルクが1500rpmから350Nmも発生するのだから余裕綽々だ。そして白眉は7速Sトロニックだ。さまざまなモードで走行してみたが、そのシフト制御の精密さにただただ感心するばかり。ギアチェンジは数百分の1秒の単位というから、マニュアル好きの私でも「時代はもうこっち」と改宗せざるを得ない。
Q5のクワトロ=フルタイム4WDは一般的な運転状況ではフロントに40%、リアに60%駆動力が配分されている。リアドライブを強調した設定なので旋回時のハンドリングはどこかFR車的でもある。これはA5から始まった、アウディの「フロントアクスル前方配置」の新しいパワーパックによるところが大きい。フロントオーバーハングの大幅短縮によって前後の重量配分が改善(フロントヘビーの緩和)されたからだ。
丘陵地帯のワインディングロードを80~90km/hのペースで走ると、気分はもうスポーツセダンあるいはスポーツワゴンであり、SUVカテゴリーであることを忘れてしまうほどだ。標準のサスペンションのストロークはフロントが214mm、リアが230mmとたっぷりとってあるので乗り心地も高水準にある。テスト車に装着されていたタイヤは18インチだったが、少々グリップ不足を感じた。それだけシャシのポテンシャルが高いということでもあるのだが。