短期連載「自動車博物館巡り」、今回は広島県福山市にある福山自動車時計博物館。時計塔がひときわ目立つ館内に入ると、いきなり見慣れぬ1台が出迎えてくれた。マツダ X2000をはじめとして、「なんだろこれ」みたいなレアカーたちが、そこには山ほど眠っている。(中編/Motor Magazine2021年1月号より)

戦時であるからこそ生まれた「妥協なき高性能」

戦後、ミリタリールックのジープはユニークな小型車として注目されるようになり、次第にコアなファンを広げて行く。そして、1946年にジープワゴン、1962年にジープワゴニア、1966年にジープチェロキー、1984年にはジープグランドワゴニアといった、ジープならではの乗用モデルを世に送り出す。これらは現代のSUVの先駆けと言えるだろう。

一方、オリジナル版はジープCJシリーズとして1986年まで造り続け、1987年には新世代のジープラングラーにスイッチする。ジープにとっては、こうした硬軟使い分けたブランド展開が後に奏を功することになる。

だが、ウイリス オーバーランドは1953年にカイザーに買収され、1970年にはAMC(アメリカンモーターズ カンパニー)に買収される。AMCは1980年にルノー傘下に収まるも、1987年にはクライスラーが吸収。1998年にはそのクライスラーもダイムラーと合併してダイムラークライスラーとなり、2007年から倒産など紆余曲折を経て2014年からはフィアットの子会社に。そして現在はFCA(フィアットクライスラー オートモービル)の一員となっているのである。

■フォード GPW(FORD GPW)

画像: フォード GPW

フォード GPW  

■フォード GPW
・モデル年式:1944年
・主要諸元:全長3359×全幅1575×全高1772mm、ホイールベース2030mm
・エンジン種類:直列4気筒2200cc、最高出力54ps
→フォード製のJEEP。年式から察せられるように本物の軍用車だ。エンジンは直4で2200ccの54ps仕様。当時の日本製くろがね四起がV2の1.4Lで33psだったのに比べると6割増しパワフルだ。兄弟車のウイリスWBとは整備性を考慮して基本は同一ながら、一部の取り付けは異なる。

■くろがね号 97式 サイドカー(Kurogane Type-97 Side-car)

画像: くろがね号 97式 サイドカー

くろがね号 97式 サイドカー  

■くろがね号 97式 サイドカー
・モデル年式:1937年
・主要諸元:全長3359×全幅1575×全高1772mm、ホイールベース2030mm
・エンジン種類 V型2気筒1260cc、最高出力12ps
→ハーレーダビッドソンのライセンス生産を行っていた陸王ベースのサイドカー。エンジンはハーレー系V2(1260cc)で12psを発生、シャフトを介し側車も駆動して悪路走破性を高めていた。「97式側車付自動二輪」は偵察や伝令に活躍。この車両は日本内燃機製造で、「くろがね」の名を冠する。

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